読書日記~「神の子」(上・下)(薬丸岳著・光文社発行)

〔弁護士 山﨑靖子〕

 めずらしく、売れ筋の本を新刊で買いました。
 先のストーリーが読めない小説、という書評を読んだから。
 
 読書人生が50年近くになると、「どこかで読んだ・・・」という感覚が出て楽しめないことが多くなってきました。それで、「先のストーリーが読めない」という言葉に飛びつきました。

 戸籍がなく義務教育も受けられなかったけれど天才的頭脳を持つ少年が、まあ色々あって(振り込め詐欺をしたり少年院に行ったり大学に行ったり会社作ったり・・・しながら)成長していくお話です。

 確かに、先のストーリーは読めない。荒唐無稽というか。でもおもしろかった。
 訴訟法上これはあり得ない、という所もあるけれど、気にしない。
 ちょうど台風が来てどこにも行けなかった連休に一気読みしました。

 薬丸岳は初めて読みましたが、健全な話を作る人ですね。
 闇社会を取り上げつつも、ノワールな部分は全くない。子どもにも安心して勧められますよ。
 一言言うと、上巻の帯は「生まれて来なければ良かった」。下巻の帯は「出会わなければ良かった」。この帯を先に読んでいたら読まなかったと思う。昭和の演歌じゃないんだから。もっとあっさり作れないものかと思う。

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慰安婦問題

〔弁護士佐藤真理〕

「河野談話」攻撃と「朝日」バッシング
 朝日新聞が、8月初め、「韓国済州島で慰安婦を強制連行した」とする「吉田証言」は虚偽だったとして「記事の取消」を公表したことを契機に、「『河野談話』における慰安婦が強制連行されたとの主張の根幹がくずれた。『河野談話』を取り消して、ぬれぎぬを晴らすべきだ」との「河野談話」攻撃と朝日新聞へのバッシングが吹き荒れています。

政府による調査と「河野談話」
 日本政府は、91年12月から慰安婦問題の調査を進め、93年8月、河野洋平内閣官房長官が調査結果を発表し、次のような談話(「河野談話」)を表明しました。
 「今時調査の結果、長期に、かつ広範な地域にわたって慰安所が設置され、数多くの慰安婦が存在したことが認められた。慰安所は、当時の軍当局の要請により設置されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれにあたったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。また、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった。・・本件は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である。政府は、この機会に、改めて、・・いわゆる従軍慰安婦として数多(あまた)の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる。・・われわれはこのような歴史の真実を回避することなく、むしろこれを歴史の教訓として直視していきたい。われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する。」
 
「河野談話」否定派は歴史の偽造を企図している
 「河野談話」を否定しようとする人々の主張は、歴史を偽造するものです。
 第1に、「河野談話」は、吉田証言を調査対象に加えていたものの、信用性に欠けるとして、そもそも吉田証言を全く根拠にしていません。
 第2に、「河野談話」否定派は、慰安婦問題を「強制連行の有無」に矮小化しています。米国下院をはじめとする7つの国・地域の議会から日本政府に対する抗議や勧告の決議があげられていますが、問題にしているのは、強制連行の有無ではなく、軍(政府)による「慰安所」における強制使役=性奴隷制度こそが、きびしく批判されている問題の核心なのです。
 「河野談話」にあるように、「甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあった」のであり、更に、人さらいのような「強制連行」もあったことは、インドネシアのスマランや中国南部の桂林での事件などでも明らかになっています。
 1991年以降、元慰安婦が日本政府を被告にして補償請求の訴訟を提起しました。8つの裁判で、35人の被害者全員が慰安婦とされた過程が「その意思に反していた」と強制性があったことが認定され、元慰安婦の人々の証言などにより、すさまじい人権侵害の実態が明らかにされたのです。

人種差別撤廃委員会の日本政府への勧告
 本年8月、国連の人種差別撤廃委員会は、日本政府に対して、慰安婦問題について、被害者への調査と謝罪を求めるとともに、ヘイトスピーチ(異なる人種等に対する差別をあおる憎悪表現)に毅然と対処し、法律で規制するよう勧告する最終見解を公表しました。

歴史の真実を直視しよう
 本屋で、中国や韓国を誹謗中傷する本が山積みされており、各地で、在日韓国・朝鮮人に対するヘイトスピーチが横行しています。このような排外主義の風潮には背筋が寒くなります。
 侵略戦争と植民地支配の歴史を直視して反省し、2度と戦争を行わないとの不戦の誓いのもとに、なによりもアジアの国々との平和と友好を築いていくことが、戦後日本の出発点だったはずです。
 15年戦争は、侵略戦争ではなく、アジア解放の正義の戦争だった、南京大虐殺も、従軍慰安婦も存在しなかった、などと歴史を偽造し、ナショナリズムを煽る、歴史修正主義は、再び戦争に向かう亡国の道ではないでしょうか。
  ドイツのヴァイツゼッカー元大統領の終戦40周年記念演説の1節を紹介します。
「罪の有無、老幼いずれを問わず、われわれ全員が過去を引き受けねばなりません。だれもが過去からの帰結に関わり合っており、過去に対する責任を負わされております。
・・問題は過去を克服することではありません。さようなことができるわけはありません。後になって過去を変えたり、起こらなかったことにするわけにはまいりません。しかし、過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目となります。非人間的な行為を心に刻もうとしない者は、またそうした危険に陥りやすいのです。」
                                            (2014年10月25日)

カテゴリー: sato

無慈悲なガザ攻撃(続)

〔弁護士 吉田恒俊〕

一方的な虐殺
 8月26日にイスラエルとパレスチナが、無期限のガザ停戦に合意してから約1カ月が過ぎました。前回(7月28日)、イスラエルの攻撃は、パレスチナへの一方的な大量虐殺であり、今すぐ戦闘を中止すべきと訴えました。その被害規模は、パレスチナ側の死者2168人(うち民間人1662人80%)負傷者10895人に対して、イスラエル側の死者は66人(民間人8人)です。何と10倍返しならぬ33倍返しであります。
 イスラエルによる今次攻撃の目的は、4月のハマース(ガザ)とファタハ(西岸)の和解により6月に発足したパレスチナ暫定統一政府の切り崩しと地下トンネルの破壊にあるといわれています。誰が犯人か分からないイスラエルの子供3人が殺されたことをファタハとし、攻撃する口実にされました。

残酷な平和
 ガザ停戦は、ただ”人が死なない”状態になっただけ。餓えないが自由はない、残酷な平和であります。この10年以上、イスラエルによって、ガザはイスラエルによって高い壁で取り囲まれ、完全に封鎖されており、地下トンネルだけがわずかな物資と人に行き来の場になっていました。イスラエルは、180万人の人々の住むガザを占領しているのと同じです。
 イスラエルの空爆があっても封鎖のために区域外に逃げられず、また、負傷しても救援部隊も入れない深刻な状況となっています。今回の戦争被害による再建の展望も立っていません。封鎖のため若者はいくら学んでも壁の外に出られません。ガザ地区の失業率は高く、卒業後は仕事がないの現状です。
 イスラエルは、現代版ゲットーにパレスチナ人を押し込めて、生かさず殺さずの状態におき、テロの脅威・危険度を安全に管理できる状態にしているのです。

停戦後も無人偵察機による監視
 停戦後も無人偵察機がガザの上空を飛び回っており、この無人偵察機にはソニー製のレンズが使われているそうです。180万のガザの住民は、「袋の鼠」状態に置かれている一方、イスラエルでは、ユダヤ系市民の95%が戦争を支持し、官民によるレイシズム(民族浄化)、アラブ人に対するヘイト扇動が行われています。

私たちは何ができるか
 このような人権問題は他人事ではありません。私たちは、学び、批判して現状を変える努力をする必要があります。また、イスラエルに対するボイコットや投資引き上げなど制裁をすること、集団的自衛権、武器輸出の解除、沖縄米軍基地に反対すること、動かない日本政府を批判し、これらの問題を解決する政府をつくっていくこと、などが求められます。