政府のNHKではなく、視聴者・市民のNHKへ

〔弁護士 佐藤真理〕

「NHK問題を考える奈良の会」の発足
 「NHK問題を考える奈良の会」が発足し、請われて代表に就任しました。今月10日開催の発足の集いには、寒さの中、100名を超える参加者があり、元NHK大阪報道部記者だった小山帥人氏が「政府のNHKではなく、視聴者・市民のNHKへ」と題して記念講演をされました。

NHKの戦争協力と戦後の放送法体制
 NHKは1926年(昭和元年)に発足しましたが、1942年2月、情報局(内閣直属の情報機関)は「戦争下の国内放送の基本方針」を定め、「宣戦の大詔に基き皇国の理想を宣揚し国是を闡明(せんめい)する国民の挙国的決意を鞏固ならしむ」との基本方針のもと、「放送の全機能を挙げて大東亜戦争完遂を驀進(ばくしん)す」との目的のため、戦争遂行機関とされました。
 戦後、放送法体制のもと、番組編成基準として、「政治的に公平であること」、「報道は事実をまげないですること」、「意見が対立している問題については、できるだけ多くの観点から論点を明らかにすること」などが謳われることになったのは、戦中の反省によるものです。

政府追随の籾井会長発言
ところが、昨年1月にNHK会長に就任した籾井勝人氏は、就任会見で「政府が右というものを左というわけにはいかない」と発言して、大変な批判を浴びましたが、最近でも、従軍慰安婦問題について「政府の正式なスタンスというのが見えないので、放送するのが妥当かどうかは慎重に考えないといけない」などと発言しています。政府や権力の監視機関というメディアの本質についての認識が全くなく、公共放送は政府の広報機関であるのが当然との認識に立つ籾井氏には、即刻辞任してもらうしかありません。 小山氏は、講演の中で、市民からNHKへのアクセスの強化(抗議・批判と激励)と会長公選制などの制度改革を求める運動の重要性を強調されました。

戦争法制と9条改憲を目指す安倍内閣の暴走
 安倍内閣は、昨年7月1日の閣議決定で、長年、憲法上許されないとしてきた集団的自衛権の行使容認に踏み切り、今通常国会で(6月24日までの会期を延長してでも)、同閣議決定を具体化する十数本の安保法制(軍事法制)を数の力で一気に可決成立させることを狙っています。万一、それを許すと、日本は、外国からの武力攻撃を受けていないにもかかわらず、アメリカの戦争に参戦し、日本の自衛隊員が他国兵士を「殺し、殺される」事態を招くことになります。非軍事・非暴力の憲法9条は死文化し、近い将来に、9条の明文改悪を実現しようとしているのです。

敗戦直後の朝日新聞社説「自らを罰するの弁」
 太平洋戦争中、戦果を報じる大本営発表は846回ありましたが、ラジオはこれを垂れ流し、新聞は大政翼賛会の発表のままに戦争賛美の論説を書き続けて、国民に多大の犠牲を強いる先導役を果たしました。日本のメディアと言論人の多くは、戦前・戦中に侵略戦争の片棒をかつぐ政府広報機関の役割を担わされたことに痛切な反省をしています。たとえば、朝日新聞は、1945年8月23日に、「自らを罰するの弁」を社説に掲げ、「言論機関の責任は極めて重い。『己れを罰する』の覚悟は十分に決めている。」と反省の弁を述べています。戦後のメディアと言論人は、2度と同じ過ちを犯さず、権力監視と民主主義の前進のために尽力することを誓って再出発したのです。

マスコミ各社幹部と安倍首相のたび重なる会食
 ところが、今のマスコミは、権力監視の役割を忘れ、政府の広報機関に堕しつつあるのではないでしょうか。特定秘密保護法の問題、集団的自衛権の問題など、広範な国民の反対運動の中でも、サンケイや読売は「推進」の論陣を張り、朝日と毎日は「反対」と二分化が鮮明です。
 ところが、その朝日、毎日を含め、マスコミ各社の社長、政治部長、編集部長ら幹部が、安倍首相と高級料理店での会食を重ねているのです。高級料亭で、2時間も3時間も接待を受け、何を話し合っているのでしょうか。

マスコミの活動監視のための粘り強い運動を
 マスコミを政府の広報機関から、主権者国民の権利擁護の機関に変えていくために、マスコミを監視していく運動を粘り強く、続けていくことが重要だと思います。安倍内閣の施策への提灯報道を批判し、抗議していく運動と共に、籾井会長が辞任しない限り、受信料の支払いを止める運動、首相とマスコミ幹部の会食を批判し続ける運動など多種多様な取り組みが大事です。同時に、すぐれた報道には、大いに評価し、激励していくことが重要で、報道関係者と市民との連携を追求していくことが必要と思います。

(2015年3月12日)

広告