世界遺産と歴史認識

〔弁護士 北岡秀晃〕

 長崎県の「軍艦島」として知られる端島炭鉱が、官営八幡製鉄所や三池炭鉱などと共に「明治日本の産業革命遺産」として世界遺産に登録されるというニュースが流れました。非西洋国家に初めて産業化の波及が成功したことを示していること等に普遍的価値があるとして、イコモスが登録をユネスコに勧告したとのことです。

 このニュースが流れてまもなく、韓国政府が、「軍艦島」などは朝鮮半島から強制的に連行された人々が強制労働させられた歴史があるとして、「強制労働から目をそらし、産業革命施設を美化するものだ」と世界遺産登録に反対するという意思が表示されました。その後、中国も同様の立場を明らかにしています。また「歴史認識」かと、正直少々うんざりしてきます。

 これに対し、日本政府は、「(遺産の)対象とする年次は1850年代から1910年である。韓国が主張しているような朝鮮半島出身の旧民間人徴用工問題とは対象とする年代も歴史的な位置付け、背景も異なる。」などと反論しました。しかし、この反論も「?」であり、説得力が感じられません。

 そもそも世界歴史遺産などはピラミッドを例にあげても明らかなように、多くの人民が過酷な強制労働に従事させられて完成されたものがほとんどであり、それは負の歴史として把握しなければなりません。「軍艦島」も、仮に世界遺産に登録されるとすれば、またそうであればなおさら、強制労働がなされた負の歴史があったことをきちんと把握し、伝える必要があります。

 ただ、翻って考えると、登録された世界遺産は、2014年12月現在、世界で1007件もあります。日本だけでも18件が世界遺産に登録されています。そろそろ世界遺産に登録されるかどうかで大騒ぎするのは終わりにしてもよいのではないでしょうか。そして、世界遺産かどうかではなく、日本の歴史をもっと勉強し、負の遺産も含めて残すべきものを保存する取り組みを進めるべきだと思います。

広告