「弁護士の年収が低下」?

[弁護士 吉 田  恒 俊]

先日の新聞に弁護士の収入が低下したという記事が出ていました。今年の3月に法務省が日弁連の協力を得て平成15年分について実施した調査結果の報告です。マスコミに人の懐具合を気にして貰わなくてもいいと思いますが、憲法と人権の擁護者としての弁護士の収入が低すぎたら、それどころではなくなるだろうという温かい配慮なのでしょうか。

記事によれば、5年前の平成10年に比べて、弁護士の収入は全体的に低下傾向にあります。登録1年目の新人弁護士は年収568万円で、5年前(平成10年)の778万円より27%も減っています。その原因として、サラ金事件が減ったことと弁護士の人数が増えたことを挙げています。それに加えて、日弁連は法的需要が伸びていないことも指摘しています。

気になったのは、「弁護士が以前ほど稼げない実態が浮き彫りになった。」との記事です。弁護士になる人は稼ぐためになったかのようで抵抗がありました。私は、どんな職業も稼ぐためというより、社会的役割という要素が大事だと思うのです。誰もが生活のために働いていることは間違いないのですが、同時にほとんどの職業には社会的役割があります。

今の職業を天職とする人にとっては稼ぎよりも仕事の方が大事なのです。人生の目的は自分の天職が何かを見極めてそれに邁進することだと思いますが、仮に今の職業が天職と思わなくとも、その社会的役割を自覚して取り組むという姿勢を常に心がけるべきだと思うのです。

確かに、私を含め多くの弁護士は収入が減っていると思いますが、幸いこれまで身近で食い詰めた弁護士は見かけませんでした。私は、大阪で弁護士になったときの所長弁護士から、「人のためにやっているという気持ちがあれば、困ったときは必ず誰かが助けてくれるから。」と教えられたことを思い出します。誰もが稼ぎだけを追い求めると、ぎすぎすした社会になりかねません。

日経の記事は意図するところはともかく、全体として弁護士の評価を引き下げています。この記事を見て司法試験の受験者がさらに減ることが心配です。
*日本経済新聞16/8/10朝刊

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