生活保護担当職員の「保護なめんな」ジャンパーに驚き

[弁護士 佐藤 真理]

神奈川県小田原市の生活保護業務を担当する生活支援課の歴代職員64人が「HOGONAMENNA(保護なめんな)」とローマ字でプリントしたジャンパーを自費で作成し、業務中に着用していたことが判明した。ジャンパーの胸には漢字の「悪」をデザインしたエンブレムがあり、背面には、「我々は正義だ」「不当な利益を得るために我々をだまそうとするならば、あえて言おうクズである」などと英語で書かれている。

2007年7月に窓口で職員3人が生活保護を打ち切られた男に切り付けられるという事件が発生し、それがきっかけで、「気分を高揚させ、連帯感を高めよう」と当時の職員が始めたようだと報じられている。

しかし、そういう事件がきっかけというなら、何故、保護打ち切りの対象者が激怒したのか、保護打ち切りを回避する道はなかったのか等の真摯な検討が必要だったのではないだろうか。生活支援課の職員らには、生活保護は憲法25条で保障された権利(生存権)であるとの意識が欠如していたのではあるまいか。

許しがたい事件であるが、背景には、国の方針に基づき生活保護受給者を削減しようとの「水際作戦」がある。市町村窓口では、保護申請を容易に受け付けようとしない傾向があり、保護開始まで時間がかかり苦労した経験が何度もある。

2014年9月、千葉県銚子市内の県営住宅で家賃滞納のため強制撤去となったその日、43歳の母親が無理心中を決意し、中学2年生の娘を殺害した事件がある。健康保険料も滞納するほどの生活苦で、母親は「家を失ったら生きていけない」と思い詰めた果ての事件であった。千葉県が家賃の減免措置をとらずに明け渡し請求訴訟、強制執行に及んだこと、市役所の窓口に二度も訪れた母親に「申請してもお金はおりない」などと述べて、生活保護の申請を勧めなかったこと等が判明した。母親は、刑事裁判で懲役7年の実刑判決を受け、今受刑中である。真に裁かれるべきは、憲法25条を踏みにじる、政府と行政の責任ではないだろうか。(新井新二外編『なぜ母親は娘を手にかけたのか(居住貧困と銚子市母子心中事件)』旬報社を参照ください)

第193国会が今月20日から始まり、安部首相は、施政方針演説で「かつて毎年1兆円ずつ増えていた社会保障費の伸びは、2016年度に続き、2017年度予算案でも5000億円以下に抑えることができた」と胸を張ったが、社会保障のさらなる連続改悪が狙われているのである。大企業の経常利益は、3年間で1・5倍近くに増え、大企業の内部留保は386兆円に達している一方、労働者の実質賃金は4年前に比べ年収が19万円も減り、家計消費は15か月連続でマイナスとなっている。働きながら生活保護基準以下の収入しかないワーキングプア世帯は、20年前の就業者世帯4・2%から同9・7%と2倍以上に増加するなど、貧困と格差が急速に広がっている。軍事費は5年連続で5兆円を越え、海外派兵型の装備を増強している。まさに、「大砲よりバターを」に逆行する予算と言わざるを得ない。

「米国第一」を宣言するトランプ米国新大統領のもとで、「日米同盟第一」を唱えて、さらに米国にすり寄ろうとする安倍政権は、最悪の組み合わせである。在日米軍基地のさらなる負担増ばかりか、戦争法発動により、米国の戦争に巻き込まれ、自衛隊員が「殺し殺される」事態に直面しつつあることが強く懸念される。

安倍政権を早期に退陣に追い込み、憲法が活かされ、「誰もが人間らしく生き、働ける社会」の実現を目指して、今年も頑張る決意である。
(2017年1月30日)

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