海軍兵学校へ(その1)

[弁護士 北岡秀晃]
2013.10.7 kitaoka

 広島で開催された日本弁護士連合会の人権擁護大会に参加したおり、一度行ってみたいと思っていた江田島の海軍兵学校に行ってきました。もちろん、今は海軍兵学校ではなく、海上自衛隊の幹部候補生学校、第1術科学校として使用されています。赤レンガの旧生徒館(明治26年完成)は、NHKの「坂の上の雲」などのロケ地ともなりました。

 明治時代に作られた海軍兵学校は、海軍将校養成のための教育機関であり、イギリス王立海軍兵学校(ダートマス)、アメリカ合衆国海軍兵学校(アナポリス)と共に最大の海軍兵学校と呼ばれていたそうです。明治の時代、富国強兵という強固な目的であったとはいえ「人づくり」に大きな力がそそがれたことがうかがえます。

 現在、1日に3回、内部の見学(無料)が許されています。決まった時間前に正門で受付を済ませると、海上自衛隊OBの方が案内し説明してくれます。所要時間は1時間30分、ただし個人的な行動は許されません。
この海軍兵学校の校舎には、昭和7年ころから掲げられた「5省」という訓戒があります。
 至誠(しせい)に悖(もと)るなかりしか
 言行に恥づるなかりしか
 気力に缺(か)くるなかりしか
 努力に憾(うら)みなかりしか
 不精(ぶしょう)に亘(わた)るなかりしか
ちょっと背筋が伸びる気がします。

 江田島は、呉港からフェリーで20分、広島港から高速船で30分程度のところにあります。軍港のある呉市は大空襲を受けましたし、広島市には原爆が投下されました。しかし、目と鼻の先の江田島海軍兵学校には、一発の爆弾も投下されなかったとのことです。

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平和な島とは

[弁護士 北岡秀晃]

 日本の最西端の島、与那国島は、アルコール度数60度の花酒(泡盛)「どなん」でも知られる国境の島であり、是非とも行ってみたい島の一つです。
 この与那国町で、8月11日、陸上自衛隊の誘致を巡って町長選挙が行われ、経済効果を強調した誘致派の現職町長が勝利したというニュースがありました。有権者数1128名、投票率95.48%、わずかに47票差という島を二分した激戦でした。

 尖閣諸島から150キロしか離れていない与那国島には、中国との緊張の高まりや、台湾に近いこともあり、陸上自衛隊の沿岸監視部隊を配備しようという圧力が高まっています。8月13日の産経新聞のコラムは、「国境の島、与那国島の安全を守っているのは、2人の警察官と彼らの携行する拳銃2丁だけだ」と書き、これは驚くべき事実であるとして、周辺海域の防備を固める重要性を強調し、国が前面に出て島民を説得すべきと主張しています。

 しかし、本当にそうでしょうか。20年ほど前、鹿児島県の沖永良部島に行ったとき、玄関はもちろん家中の戸や窓を開け放して、みんなが家を出て行く様子を見て、犯罪もない平和な島だと驚き、うれしく思ったことがありました。与那国島も2名の警察官がいれば足りる安全で平和な島なのでしょう。ここに陸上自衛隊を駐屯させることが、本当に与那国島を平和で安全な島にするのでしょうか。むしろ、島の安全を脅かすことにならないのでしょうか。

 与那国島は、テレビドラマ「Dr.コトー診療所」のロケ地となったところでもあります。与那国島にはこちらの方がよく似合います。

「マニュアル人間」卒業

[弁護士 北岡秀晃]

 走行距離が15万キロを超えた愛車を買い換えることになりました。同時に、30年来こだわって乗り続けてきたマニュアル・トランスミッション(MT)の車から、オートマチック(AT)車に乗り換えることになりました。
 
 日本の乗用車の中でAT車が占める割合は、既に2003年に95%を超え、新規普通自動車免許取得者の中でも、AT限定免許が2011年に54%となり、限定なしを上回ったといいます。マニュアル(MT)車にこだわった「マニュアル人間」は、今や希少種とも言えます。
 従って、AT車に乗り換えることについては、後ろめたい気もして、後ろ髪引かれる思いでしたが、やはり「卒業」することにしました。おかげで、今では非常に楽ちんに運転しております。ただし、左足と左手が手持ちぶさたで、坂道などでさっとクラッチペダルを半クラッチ状態に合わせるなどのテクニックを楽しんだり、失敗してエンストしたりすることもなくなりました。
 
 人間は、便利になって、今までやっていたことをやらなくてよくなれば、今までできていたことができなくなります。マニュアルどおりにしか行動・判断できないマニュアル人間は困りますが、マニュアル(自動ではなく手動)にこだわった「マニュアル人間」であることは望ましいことかも知れません。
 それでも年齢のせいもあるのでしょうか。AKBじゃないけれど、卒業します。

伊勢神宮と靖国神社

〔弁護士 北岡秀晃〕

 先日、式年遷宮の年を迎えた伊勢神宮に行ってきました。萱葺きの屋根が風雨で傷んだ、それでいて大変趣のある社殿の横に、真新しい社殿が建てられており、10月の遷御(せんぎょ)を待っている感じです。伊勢神宮には広い森と多数の巨木があり、自然と共に神聖なものを感じることができます。第1回の式年遷宮は、持統天皇4年(690)にさかのぼるそうですし、鎮座以来1日も絶えることなく続けられてきた神事があることにも驚かされます。但し、若者を含めて大変な数の参拝者であり、内宮の正宮前の石段が大渋滞し、10分以上も待たされたことには閉口しました。それでも、清らかな心になった気がして、家族やみんなの幸せと平和な毎日をお祈りしました。

 今年3月に東京出張したおり、初めて靖国神社に行きました。こちらは当然ながらきわめて人工的で、神聖なものを感じることはできません。境内にある遊就館には、明治維新ころからの歴史が展示されていますが、英霊、軍神が中心です。かろうじて軍神や英霊となった兵士の家族の視点はありますが、徹底しているのは、戦争で犠牲になったり苦しみを受けたりした一般の民衆やアジアの人たちの視点が欠落していることでした。これは沖縄戦を展示したところでも同様であり、強烈な違和感を覚えました。
 戦争の悲惨さを伝えていくと共に、平和を祈る清らかな心になって、戦争の犠牲となった人々すべてを追悼するところが必要な気がします。

弁護士自治と懲戒請求

[弁護士 北岡秀晃]

 弁護士は、依頼者や刑事被疑者・被告人の権利を守るため、時に国家権力とも対抗しなければなりません。そのため、弁護士・弁護士会には高度な自治権が認められており、他の士業と違って、国家が弁護士を懲戒したり、弁護士の職務を監督したりすることができません。弁護士の懲戒は、弁護士会が行います。
 弁護士に対する懲戒請求は、2011年の統計で1885件。懲戒処分の件数は80件程度です。この懲戒制度がきちんと機能し、問題のある弁護士が処分されることは、弁護士に対する信頼を確保し、弁護士自治をより強固にするものと言えます。

 ところで、大阪弁護士会の会員や市民ら約730名らが、同会の会員でもある大阪市長の従軍慰安婦発言に関して、弁護士の品位を損なうとして、大阪弁護士会に懲戒請求を行いました。これを受け、この懲戒請求を行った会員に対する懲戒請求が出されたとの報道がありました。大阪市長の発言は、弁護士としてではなく、政治家としての発言であり、これを理由とした懲戒請求は懲戒制度の政治利用だというのが理由のようです。
 言論に対しては言論で対抗するのが筋ではありますが、過去の事例を見ても、職務活動と関係のない犯罪行為を理由とする懲戒事例はあり、必ずしも弁護士としての発言だけが懲戒の対象となる訳ではありません。それに市長の発言は、人間としても品位を欠くものであり、弁護士の品位を貶めるとの評価も当然のことと言えます。

 ただ、弁護士による懲戒請求が増加したり、懲戒請求合戦が多発したりすることは、弁護士に対する信頼を損なうことにつながり、結果として弁護士自治の基盤を自ら切り崩すことになることを懸念せざるを得ません。弁護士自治は、弁護士が職業的使命を果たすために、国民から負託された大切なものなのですから。

健康診断での出来事

〔弁護士 北岡秀晃〕

   先日、妻と2人で健康診断に行きました。毎年、この時期に同じ病院で受けている健康診断です。残念ながら、パーフェクトな健康状態ではなく、アルコールのせいか肝機能が定常域を超えているなど、人それぞれの問題点があります。

 ところが、この日問診をしてくれた看護師は、去年の健診で問題点を指摘された点について医療機関の診察や精密検査を受けていないことを、比較的強い口調で指摘し、今度は必ず受けるよう求めました。精密検査等を受けていないのは私の責任であり、返す言葉もないのですが、あまり強く言われると、「自分の体じゃ、ほっといてくれ!」と言いたくなります。私の後に問診を受けた妻などは、この看護師から「夫婦揃って放置している」などと言われたそうです。

 もちろん看護師さんも善意で言っているのでしょうが、「放置」というのはあんまりです。ものには言い方があるでしょうに。大変嫌な気分になりました。健康診断の結果も悪くなるような気がします。

 ひるがえって考えると、弁護士という職業にあるものとしても、言葉使いや言い方には注意しなければなりません。やはり法律事務所は、来るときはともかく、帰るときには気持ちよく帰っていただけなければなりません。