夫婦別姓裁判について思うこと

〔弁護士 山﨑靖子〕

 明日12月16日、最高裁大法廷は、夫婦別姓を認めていない民法の規定が違憲かどうかを巡る訴訟の判決を下します。

 民法上、夫婦はどちらかの姓に統一しなければならず、ほとんどの夫婦が夫の姓を選んでいます。その規定が、個人の尊厳を定めた憲法13条や、男女の平等を定めた憲法24条に反するとして提訴した裁判です。
 
 夫婦別姓に反対する人たちは、家族の一体感が損なわれるとか、家族のきずなが無くなると言いますが、別姓を求める人は、夫婦の姓を統一しないことを求めているわけではないく、統一したい人は統一し、統一したくない人は別姓であることを認めて欲しいと言っているだけです。また、「家族の一体感」とか「きずな」というのは、当事者が考えれば良いことであって、他人が認定することではありません。

 夫婦別姓を可能とする判決を期待しております。
 そして同時に、法律婚をしない自由を認める社会になって欲しいと思っています。
 なぜ、夫婦になるのに届出がいるのでしょうか。
 
 憲法24条1項は「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、・・」と規定し、なんらの方式を規定していません(「両性」の部分に関しての争点は置いておきます)。2人が夫婦になろうと合意すれば夫婦です。家族となります。役所への届け出は、憲法の文言上は不要です。
 
 法律婚をしたいけれど姓を変えたくないので法律婚ができないと悩んでいる人が法律婚をできる制度になえればいいなあと思いますが、同時に、法律婚をすることを選択しない人に不利益のない制度にもなって欲しいです。

 届け出をして戸籍を同一にして家族になりたい人も、戸籍は別だけど家族になりたい人も、どちらも優劣・損得の無い社会になって欲しいと思います。

 「除夜の鐘 おれのことならほっといて」(中村伸郎)

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読書日記~「熔ける」大王製紙前会長 井川意髙の懺悔録~

〔弁護士 山﨑靖子〕

 カジノの掛け金のために子会社から総額106億8000万円を借り入れたことが会社法違反(特別背任)となり懲役4年の実刑となった大王製紙前会長の手記。

 カジノを日本で合法化しようとする法律(「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」、通称「カジノ解禁法案」)を、自民党がしつこく成立させようとしていることから、古本屋で見つけて読んでみました。

 ・・・タイトルが間違っている。9割が自慢話。自分がいかに勉強や仕事で有能であったか。残り1割はマスコミなどへの恨みと簡単な事実経過。

 「失敗しない人間などいない。人生何度だってやりなおせる・・・」帯に書いているホリエモンの惹句。これだけで本の中身が予想できたはずである。ギャンブルにどういうふうにしてのめり込んでいったのか、客観的・詳細な自己観察記録と思い込んで買った自分の不明を恥じた。まだまだ読解力が足りない。

 後悔は簡単にできるが反省は容易にはできないということがよくわかる本である。
 ギャンブルのことを知りたければ森巣博の本を読んでいる方が100倍まし。負ける気がしなくなるのが欠点だが。
 
 井川やホリエモンみたいな人間だけがカジノに行っているうちはいいが、日本でカジノが合法化されたら、自分の財布と同視できる他人の財布を持たない人間も行くことになるのは明らか。

 カジノ解禁法案は今国会でも成立しなかった。でも油断できない。

風に立つライオンの周辺のひとびと(続き)

〔弁護士 山﨑靖子〕

 さて、前回のブログで、ケニアのナイロビで「マトマイニ・チルドレンズ・ホーム」を設立した菊本照子さんを紹介しましたが、先月一時帰国して、京都で帰国報告会のような会合があったので、行ってきました。

 会合の目的は、ホームで作っているフェルト人形の展示即売会です。
 ホームでは、フェルト人形を手作りし、販売しています。汚れた羊毛を仕入れて、洗って、加工し、人形にしていきます。全行程、手作業。通いの女性たちが作っています。

 観光地のお土産物というと、「名物にうまいものなし」と言われるように、質が悪かったり、雑だったり・・、と思われるかもしれませんが、マトマイニのフェルト人形は違います。ナイロビにセレナホテルという高級ホテルがあるのですが、そこの土産物店でも売っており、大好評とのこと。

 スラムの女性たちが貧しい孤児院で作っているアフリカのおみやげ・・・というイメージですが、それでは一時の寄付は募れても長続きしません。質の良い商品を作らなければすぐ飽きられます。どんなに有名なミュージアムもショップが充実していないと来館者が増えない時代です。質の高い商品を自力で作って、売って、自立する。ここに至るまで大変だったようですが、マトマイニは、これからも、もっともっと良い商品を作ってくれると思います。

 ご興味のある方はこちら⇒http://ameblo.jp/scckenya/theme-10008113230.html

 (追記:菊本照子さんと一緒に末っ子が京都に来ていました。30年前はおむつもとれていなかった幼児がこんなに大きくなって・・・というより、当時の私は彼女より若かったんだなあ、と老いを実感しました。)

2015.6.8 山﨑 写真1

「風に立つライオン」の周辺の人々

〔弁護士 山﨑靖子〕 

「風に立つライオン」は、原作さだまさし、主演大沢たかおの映画。日本人医師・航一郎(大沢たかお)の奮戦記ですが、映画ではなく、「風に立つライオン」公開記念スペシャル!~命のバトンをツナグ人々の物語~」を見ました。

 この番組そのものは映画の紹介というより、映画のモデルになった人や、そのほかの「命のバトンをツナグ人々」を紹介するドキュメンタリーのような作りでした。
 登場する人の中に、菊本照子さんという日本人女性がいます。彼女は日本で教師をしていたところ35歳でケニアに渡り、1987年にケニアの首都ナイロビの郊外に「マトマイニ・チルドレンズ・ホーム」を設立しました。映画の撮影にもこのホームは使われたそうです。
 
 菊本さんは文字通り「私財をなげうって」ホームを経営しています。自分の生活費は日本からの年金で、ホームの経営はわずかな寄付と野菜などの売上げでまかなっています。

 さてここからが本題。この「わずかな寄付」のわずかな一部が我が家の寄付金です。私と夫は30年前にナイロビで知り合ったのですが、その時に菊本さんとも知り合いました。ホーム設立までの苦労話も知っています。ですので、ホームには毎月ず~~~っと寄付し続けています。継続は力なり。わずかな寄付でも積もれば山となっている・・・はず

 数年前に菊本さんに会った時、継続的に寄付してくれる人が●人で・・・・という話が出て、私と夫が想像していた数と桁が少なくて仰天しました。
 一時的に寄付してくれるのもありがたいけど、継続する支援者を募るのは容易なことではありません。

 ホームにいる子のほとんどは親に遺棄された子です。子どもたちはマトマイニを家として育って自立していきますが。それにはお金がかかります。もしご興味がおありの方はよろしくお願いします。

 ホームの紹介はこちら⇒www.geocities.jp/scckenya/index.html
 菊本さんのブログはこちら⇒ameblo.jp/scckenya/entrylist.html

お正月読書日記

〔弁護士 山﨑靖子〕

 あけましておめでとうございます。
 そろそろお正月気分が抜けるころでしょうか。今年最初のブログは、お正月休みの読書報告から始めます。

1 「イノセント・デイズ」(早見和真)
 各紙で絶賛されてるので読みました。元恋人の妻と1歳の双子を放火によって殺害した確定死刑囚の幸乃。彼女の生い立ちをたどりながら、事件の真相を解き明かしていく、というストーリーですが・・・・・。正直なところ、さっぱり感情移入ができない。登場人物のどれにも。こんなことで代わりに死刑囚になるかなあ、という違和感。最大の疑問は帯に書いてある「ひとりの男だけが味方であり続ける。」のこと。「ひとりの男」って誰?味方の男は3人いるけどなあ。

2 「その女アレックス」(ピエール・ルメートル)
 週刊文春2014年ミステリーベスト10の1位。監禁されて檻に幽閉され、衰弱したアレックスは必死で脱出し・・・・。アレックスは被害者なのか?ストーリーがどんどん予想とずれていく感じがすごくおもしろかった。元旦に一気読みしました。タイトルだけ読むと「その男ゾルバ」みたいですが、全然違います(そちらの映画も傑作ですが)。妙にぬるい和物ミステリに飽き飽きしている人にお薦めします。

3 主人公が女性で、しかも2冊とも最後は死にます。お正月早々縁起が悪いので、最後は元気な女性が主人公の本をご紹介します。
 「夜また夜の深い夜」(桐野夏生)
 顔を変える続ける母親とアジアやヨーロッパの都市を転々としながら成長する「マイコ」。国籍も父親も本名もわからず、学校にもまともに通わせてもらえない。マイコは家出し、アナとエリサに出会う。犯罪を重ねながら生き抜いていくマイコたち。サバイバル小説で成長小説。ただし、それほど甘い話ではありません。
 読後感が良いわけではないし、マイコの将来が明るいわけでもない。
 それでも最後はマイコの前向きで明るい手紙で締めくくっています。
 読んだ人の夜が明ける日が来るかどうか知りませんが、お薦めです。 

読書日記~「神の子」(上・下)(薬丸岳著・光文社発行)

〔弁護士 山﨑靖子〕

 めずらしく、売れ筋の本を新刊で買いました。
 先のストーリーが読めない小説、という書評を読んだから。
 
 読書人生が50年近くになると、「どこかで読んだ・・・」という感覚が出て楽しめないことが多くなってきました。それで、「先のストーリーが読めない」という言葉に飛びつきました。

 戸籍がなく義務教育も受けられなかったけれど天才的頭脳を持つ少年が、まあ色々あって(振り込め詐欺をしたり少年院に行ったり大学に行ったり会社作ったり・・・しながら)成長していくお話です。

 確かに、先のストーリーは読めない。荒唐無稽というか。でもおもしろかった。
 訴訟法上これはあり得ない、という所もあるけれど、気にしない。
 ちょうど台風が来てどこにも行けなかった連休に一気読みしました。

 薬丸岳は初めて読みましたが、健全な話を作る人ですね。
 闇社会を取り上げつつも、ノワールな部分は全くない。子どもにも安心して勧められますよ。
 一言言うと、上巻の帯は「生まれて来なければ良かった」。下巻の帯は「出会わなければ良かった」。この帯を先に読んでいたら読まなかったと思う。昭和の演歌じゃないんだから。もっとあっさり作れないものかと思う。

高知日記(続き) -争族

[弁護士 山﨑靖子]

1 79歳(母)は自分たち亡き後を心配しているようだ。子は私と兄(54歳)の2人である。

母は、自称「苦労した長男の嫁」。祖父の相続で父親の兄弟ともめて苦労したらしい。そのためか私に、「全部お兄ちゃんにあげたらいかんよ」と言った。
どういうことかというと、「嫁に行った娘は実家の遺産を相続しないものだが、全部をもらったらその人間はだめになる。だから、自分の教えを受けた娘(=私)は遺産をいらないというはずだけど、そうなれば大事な一人息子(=私の兄)がだめになる。だから、娘は少しだけ相続しなさい。」、ということだった(回りくどくてすみません)。

80歳近くになっても息子はかわいいんだなあと思った。
「放棄するはずないやろ。兄ちゃんと半分わけするき、安心してや。」と返事しておいた。その横で「もらったもんの勝ちや」と父(82歳)は言った。

2 「相続」を「争族」にしないために・・・・・

このフレーズはよく聞きますよね。うまいかけことばです。そのため、「遺言」を勧められることが多いと思いますが、本当に「遺言」があれば「争族」にならないのでしょうか。
弁護士になって18年。多くの遺産相続事件に関わりました。相続人の代理人として、あるいは調停委員として。

あの土地が欲しい、銀行預金が欲しい、あんな山はいらない、親の面倒を見たから多くもらう、兄貴は生前贈与してもらっているじゃないか・・・。
これらが本当に「遺言」があればクリアできるでしょうか?
確かに、遺言があれば、不動産の取り合いとか、預金の取り合いはありません。指定されているように相続するだけのことです。でもそれで「争い」はないのでしょうか?

法律上、子の相続分は平等です。しかし、遺言で分け方を指定すると、どうしても「平等」にはなりません。長男に分けた土地の価値と次男に分けた銀行預金が同額でしょうか?長男には墓の管理(祭祀の承継)をしてもらうから、多めに相続させる、という気持ちであったとしても子らが納得するでしょうか?差をつけられて、子らがその後も仲良くつきあいできるでしょうか。
また、子であれば遺留分もあります。

立つ鳥跡を濁さずとも言います。遺言を書く時は、死後の人間関係も考えましょう。

なお、子がいない方については、「遺言」があった方が良いと思います。配偶者と自分の兄弟姉妹(あるいはその子)が相続人となるケースが多く、縁が非常に薄い人間同士が相続するので、もめます。「世話をしてくれた姪にあげたい」とか、「妻に全部」とかの遺言があれば、もめません。

遺言や相続についてのご心配があればお早めにご相談ください。