[弁護士 吉田恒俊]
日本人の死因第1位はがん(悪性新生物)で、1981年に死因トップになって以来30年間その座を維持しています。死亡者数は、1981年で約17万人であったのが、次第に増えて2012年には36万人となっています。この間、がん治療はめざましく進歩して、「大抵のがんは直る。」と公言する医師もいます。しかし、がん死は減るどころ倍増しているのです。現代のがん治療のどこかに問題があるのではないか、と素朴な疑問を抱きます。
体の異常を訴えて近くの病院又は診療所で見て貰って、大病院を紹介されて行くと、徹底的な検査をされて(それだけで病気になる人もいます)、がんだと診断されたら、手術、抗ガン剤投与、放射線治療のいずれか又は併用を勧められるでしょう。がんかどうか分からない場合でも10%の可能性があれば手術を勧められることもあります。検診でがんが見つかった場合も同様でしょう。
がんだと言われただけで意気消沈して落ち込む人も多いことと思います。
最近、慶応大学講師の放射線治療尾専門医である近藤誠医師の「医者に殺されない47の心得」が大ベストセラーになっているそうです。私も71歳のがん年齢ですので、早速買って読みました。さらに、「がん治療で殺されない七つの秘訣」も買って読みました。
近藤説を簡単に紹介します。
(1)がんには、本物のがんと転移しないがんもどきとがある。
(2)本物のがんは、見つかったときは既に転移しており、治療しても無駄だからしないほうがいい。
(3)がんもどきは、転移しないので、治療する必要はない。その場で大きくなったら対症療法をすればいい。
(4)手術、抗ガン剤、放射線は副作用があって、確実に命を縮める。
(5)以上はがんの9割を占める胃がん、肺がんなどの固形がんを対象とするもので、急性白血病、悪性リンパ腫、などの血液がん及び固形がんの内、睾丸腫瘍、子宮絨毛がん、小児がんなどは抗がん剤で治る可能性があるので例外とする。
近藤医師はこれまでも「患者よ、がんと闘うな」など、現代のがん治療に厳しい意見を述べて医学界と対決して来られました。この本は、それまでの考えを分かりやすく述べたものですが、同医師は第60回菊池寛賞を受賞しました。受賞理由は、乳房温存療法のパイオニアとして、抗がん剤の毒性、拡大手術の危険性など、がん治療における先駆的な意見を、一般人にもわかりやすく発表し、啓蒙を続けてきたことです。同賞は選考顧問会議で選ばれ、委員は東海林さだお・半藤一利・平岩弓枝・養老孟司の各氏。同医師の意見が社会的に承認されたわけで、がん治療を中心とする現代最先端医学界も、もはやこれまでのように近藤医師を無視することは出来ないでしょう。
がんになったらどうするか。それは各人の人生観とも関わる深刻な事態だと思います。だからこそ、もし、医師からがんだと言われたら、上記の 近藤誠医師の本を一読されることをお勧めします。