平和憲法を護り、活かすために地道に活動を続けます

[弁護士 佐藤 真理]

 78年回目の終戦記念日を迎えました。
 日本は、憲法9条を持ちながら、安保条約の下、米軍の駐留が続き、自衛隊の戦闘力年々増大してきました。
 憲法9条があるので、1950年代の朝鮮戦争、1965年から75年のベトナム戦争で、韓国やベトナム人民が多大の犠牲者を出しましたが、日本の自衛隊員が犠牲になることはありませんでした。また、2001年の9・11同時多発テロ後のアフガン報復戦争には、小泉内閣は、テロ特措法をつくって、自衛隊の護衛艦をインド洋に派遣し、2003年のイラク戦争には、「イラク特措法」により、非戦闘地域に陸上自衛隊が派遣されたものの、1度も自衛隊員が武器を使用することはありませんでした。米軍に追随して自衛隊派遣を強行しようとする政府も、憲法9条を守れと自衛隊派遣に反対する民衆の運動の力で、かろうじて「戦争しない国」を続けることができたのです。
 しかし、今、「新たな戦前」ではないかとの指摘がなされているように、日本は、「戦争か平和か」の歴史的岐路に立たされています。
 
 岸田政権は、あの安倍政権以上に危険な政権です。岸田政権が昨年末に国会にも図らずに閣議決定で決めた「安保三文書」の狙いは3つあります。
 第一は、中国との軍事対決、「台湾有事」に際して日本が武力も含めて加担することができるように自衛隊を「攻撃的軍隊」に全面改造することです。
 第2の狙いは、日米軍事同盟を文字通り「戦争する同盟」に変えることです。日本が配備するミサイルも、日本単独で行動するのではなく、米国の対中軍事包囲網の一角として米軍の指揮統制下での運用です。岸田政権は、外交においても、従来の対米追随外交の枠をはるかに超えて、G 7、米・日・印・豪のクワッド(QUAD)、NATO諸国との連携など米国中心の対中包囲網外交に精力的に動いています。
 第3の狙いは、こうした憲法蹂躙の軍拡を実現するための大増税、国民負担増の正当化です。

 これらを実行するには、政府自身が積み重ねてきた自衛隊に対する憲法の制約を根こそぎ破棄しなければならなくなります。自衛隊は憲法9条が禁止している「軍隊」ではないと強弁するために自ら設けてきた制約をなくすために、9条自身を変えなければなりません。岸田政権は安倍政権もできなかった明文改憲を急がざるを得なくなっているのです。憲法との矛盾は明らかで、その追及が不十分なメディアの責任も重大です。

 9条の会呼びかけ人の澤地久枝さんは、長年『アベ政治を許さない』のプラカードを掲げて、国会正門前の「3の日行動」に参加されていますが、猛暑の今夏も背中の痛みをおして『平和の旗 降ろしません』とプラカード掲げて、国会前行動に参加されています。

 平和を希求する私たち一人一人が、声を挙げ、行動に立ち上がるときでしょう。「平和、いのち、くらしを壊し、市民に負担を押し付ける軍拡、増税に反対する請願署名」を急いで広げましょう。
 少人数でも、憲法を護り活かすための学習会を開いて下さい。ぜひ、一緒に議論したいと思います。
                          (2023年8月15日)

1週間、夫にワンオペ家事育児をしてもらった

[弁護士 大久保 陽加]

先日、あまりの忙しさに1週間だけ、夫に保育園のお迎えから寝かしつけまでの時間を一人で頑張ってもらいました。

前提として、私たち夫婦は割と家事育児の分担をしている「方」ではあります。ただ、どこまでいっても、私(=母)が主導で、夫の「お手伝い」感が抜けないのです。

1週間、夫にワンオペ家事育児をしてもらって、感じたことをまとめたいと思います。

「家事労働」の見える化の重要性

夫に対して、「家事の負担が大きい。」と愚痴ると、決まって、「え?炊事、洗濯、掃除だけでしょ??」と言われていました。

ちょっと待ってよ・・・「炊事」って言っても、調理だけでなくて、保育園のメニューとかぶらないようにとか、栄養バランスとか色々考えながら買い物をしたり、仕事のスケジュールを見て出勤前に下ごしらえをしたり、食事の後には皿洗いやコンロ周りの掃除をしたり・・・複数の工程があるのよ・・・

さらには、炊事、洗濯、掃除に分類されない「見えない家事」も無数にあって、常に頭の中に家事のTO DOリストが並んでる状態です。

夫にこのことを説明してもなかなか理解して貰えませんでした。   

しかし、数日間(さすがに1週間は放っておけなかった・・・)夫1人が家事育児を担うことになり、家の中はゴミ屋敷化・・・日分の食器は溜まってるわ、コンロにはカピカピになった物体が貼り付いてるやら、ストックの補充はされてないやら・・・れは悲惨なことになりました。

この惨状を見て、はじめて「想像していた以上に私が家事労働を担っていたこと」に気付いてもらえたようです。

家の中での「家事」って、主にそれを負担している人以外は、項目自体も把握しにくいのですね。主な家事負担者も各項目を全て説明するのも大変です。

「今まで、全部やってくれてたんだね。ありがとう。」と言ってもらえて、何だかとても救われた気持ちになりました。

今まで、分かってもらえない!と怒りまくっていたのですが、私の説明も十分じゃなかったのかもしれないと反省しました。各家事の必要性とか時間コストを説明するのは面倒ですが、分担をするためには初期投資としての説明が不可欠ですね。

2 育児という感情労働にはパワーが必要

毎日、ワンオペ育児が続くと可愛い我が子がモンスターになることがあります。

どんなに可愛くても、仕事を終えて疲れ切った後、自分の欲求を極限まで抑えて、子ども最優先に動くことは簡単ではありません。1日、2日なら簡単ですが、毎日となると、「もう!」と思ってしまうこともしばしば・・・(それでも、感情を抑えてニコニコし続ける・・・)

このような感情労働の大変さって理解されにくくないですか?!!

経験していないと、「子どもと一緒に過ごすなんて楽しいだけじゃん!」と思いがち、この勘違いによって喧嘩になることって本当に多いと思います。

1週間、ときにはモンスターになる我が子と過ごして、育児が楽しいだけじゃないと分かってもらえたのか、夫がとても協力的になりました。

私の方は、そんな我が子との時間が激減してさみしくってさみしくって・・・どんなに大変でも、やはり我が子との時間はかけがえのない宝物ですね。

3 仕事を終えてから帰宅できるという「心の余裕」

出産して最も変わったのは、仕事が終わっているか否かに関わらず、保育園のお迎えの時間が来ると、強制的に仕事を終えなければならなくなったことです。出産前は、「やろう!」と思った日に、ときには徹夜で、仕事に没頭できました。これができないというのは本当に辛い。

(もちろん長時間労働を是としているわけではありませんが)やらなければいけない仕事をその日のうちに片付けられるというのは、ストレスが全く違います。

帰宅した後も「あの仕事しないと・・・」考えながら家事をして、子どもと遊んでというのは、なかなかしんどいですよね。

ただ、時間内に終わらせるというプレッシャーがない分、無駄な時間が増えたようにも思います(保育園のお迎えダッシュの直前30分くらいの処理スピードは半端ない)。

時間制限は、ワーママの弱さだと思っていたのですが(もちろん、それで辛いことは多い)、弱さではなくて、強さなのでは?と考えて、とにかく17時に仕事を終えることを目標にすることにしました。

起床時間を1時間早めたり、スケジュールに余白の時間を多めに入れたりと試行錯誤しています。

よくやくコツが掴めて、17時にTO DO リストを消化して、スッキリとした気持ちで家に帰ることができるようになりました。

ストレスが減り、睡眠時間も規則的になって、処理スピードが格段も上がりました。

なくなった時間を嘆くのではなく、ある時間をどう使うのか工夫することで、ワーママでもストレスなく仕事を回せるのだと気付きました。

まだまだ改善の余地ありですので、時間制限のある方で工夫をしている時間術を教えてください。

4 パートナーと「家事」「育児」を分かち合うことの大切さ

パートナーとの関係を良好にするためには、「分かち合うこと」がとても大切です。

と言っても、それぞれ見ている景色(家事育児の認識)が違いすぎて、分かち合うことは、本当に難しいですよね。

今回、実践を通じて、少し理解してもらえて、とても楽になりました。

逆に、私も毎日残業をして子どもの寝顔しか見られない夫の気持ちも分かるようになりました(これもこれで辛いですよね)。

毎日の忙しさで、コミュニケーションを後回しにしがちですが、コミュニケーションって本当に大事ですね。

ワーママ、ワーパパのみなさん、頑張りましょう!!

Noteでも更新していますので、覗いてみて下さい。

https://note.com/0_0qbo_h/n/n260d975319a7

一票一揆で野党連合政権を実現しよう

 

[弁護士 佐藤真理]

 安倍政権を継承した菅義偉政権は、国民の命と暮らしを犠牲にして東京五輪を強行しました。医療関係者や識者、広範な国民の懸念が的中し、新型コロナ感染症のパンデミックを引き起こし、感染者は連日、2万人を越えています。救急車を呼んでも入院先が見つからず、自宅療養を強いられる人が激増し、もはや医療崩壊です。

 無為無策を続けた菅政権、小池都政の失政であり、明らかな人災です。
国民の命も暮らしも守る意思も能力もない、自民公明の菅政権には退陣してもらうほかありません。


 二月(ふたつき)以内に行われる総選挙は、憲法を軽視し、貧困と格差を広げる政治を変える絶好のチャンスです。一番大事なことは、主権者国民が棄権せず、怒りの一票を投じることです。5割前後に留まる投票率を20%以上引き上げる「一票一揆」が実現すれば、政権交代は間違いありません。


 安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合の6項目の共通政策提言(①憲法に基づく政治の回復、②科学的知識に基づく新型コロナウイルス対策の強化、③格差と貧困を是正する。④エネルギー転換と地域分散型経済システムへの移行、⑤自由で公正な社会の実現、⑥権力の私物化を許さず、公平な行政を実現する)を受けて、市民・労働者と野党の共闘により「野党連合政権」を実現するために、微力を尽くしたいと決意しています。

(2021年8月23日)

福島原発事故10年目このまま震災遺構にしよう

                 

[弁護士 吉田恒俊]

 3月11日は東北大震災10年の記念日でした。嬉しくない記念日ですが、災い転じて福となすという発想も必要ではないでしょうか。特に、原発の廃炉について、政府と東電は2041~51年に完了を目標としているが、道筋が見えない、と誰もが言っています。現在の科学技術水準では100年経っても無理と思われます。


 その上、差し迫った課題として放射性物質「トリチウム」を含んだ処理水の処分があります。政府は昨年10月、薄めて海に流す方針を固めていましたが、漁業関係者からの強い反対で実行できませんでした。しかし、敷地内の貯水タンクは22年秋ごろには満杯になります。それが分かっていながら、政府も東電も具体策を出せていません。また、福島県内で出た汚染土は東京ドーム11杯分に相当し、国は44年度までに県外での最終処分を目指していますが、未だ候補地探しも始まっていません。こんな状態で、原発そのものの廃炉なんて先のまた夢です。


 私は、2019年12月のこの欄で、「福島第1原発に石棺をかぶせよう」と投稿しました。10年目の今日、ますますその必要性を感じます。先日の新聞に出ておりましたが、チェルノブイリでは、広い意味で観光地として売り出しているそうです。戦争を除けば人類史上最大の負の遺産としての原発事故遺跡を、今後の研究の場あるいは反省の場として広く開放したい。世界中から沢山の見学者が訪れることで、原発の有する核の恐ろしさを体感する場とします。こうして、原発反対を日本と世界に訴えるシンボルにしましょう。同時に、福島第1原発周辺の自治体と住民が経済的にも潤うようにしたいものです。

 残念ながら、有識者、マスコミ、政党など責任ある人たちは、「廃炉の道筋が見えない。」と言うばかりで、誰も「廃炉は無理だ。このままチェルノブイリ化するべきだ。」と言う人はいません。確かに、この提案は、国民なかんずく福島周辺の人々の感情的な反発を免れないでしょう。しかし、これしか方法はないのだ、と説得することこそ指導的立場の人たちの責務と言えます。

 この記事は、ミミズの戯(たわ)言(ごと)にすぎませんが、多くの人たちが賛成していただければ大きなうねりとなるに違いありません。
2021/03/11

歴史的な非核条約の発効が確実となる身近な議員への働きかけを

     [ 弁護士 吉田恒俊]
                                                   

 ご承知のとおり、去る10月24日、核兵器禁止条約(「非核条約」といいます。)が来年1月22日に発効することが確実となりました。人類の存亡がかかった核兵器廃絶に向けて歴史的な一歩となりました。


 非核条約は、国連で2017年07月07日に122国の賛成多数(反対はオランダのみ。核保有国は不参加)で可決され、50カ国が批准すればその日から90日後に発行することになっていました。

 当初簡単だと予想された批准はアメリカの妨害があってなかなか進みませんでしたが、本年10月24日に中米のホンジュラスが国連本部で批准の手続を終えて50カ国に達しました。唯一の被爆国日本はアメリカの核抑止力を維持するために国連決議に不参加とし、菅内閣も国民と被爆者の切なる願いに反して、批准はしないとしています。


 私ごとですが、34年前に非核の政府を求める奈良の会の立ち上げに参加して以来、非核平和の集いの開催やニュースの発行など、核廃絶に向けての運動をして参りました。非核条約の発効はいよいよ非核の会の出番だという気持ちを強くします。


 政府が動かない現状を打開するために、地方自治体から内閣と国会に対して、非核条約を署名しかつ批准せよという声を上げていくことが大事です。既に全国で非核条約への参加・署名・批准を求める意見書を上げている議会は495自治体に達しており、奈良県でも県を含めて12自治体が同様の決議を上げています。


 そこで、本年10月16日の県議会で、政府に対し核兵器廃絶の署名を求める動議が共産党から提案されました。既に県議会は平成29年に全国でいち早く核兵器廃絶を求める決議を採択しています。動議には他の野党からも賛成の意見表明がありました。これに対して決議に反対する意見はありませんでした。ところが、動議は反対多数で否決されたのです。反対議員は内心では賛成だが所属政党の意向に反することが怖いのでしょう。しかし、それを乗り越えて賛成してもらわないと世の中は変わりません。地方議員だけでなく、奈良選出の国会議員にも菅内閣の意思を条約賛成に変える活動をするよう働きかけることは出来ます。


 私たちは,国民、県民の一人として、身近な議員に直接要求することは出来ます。政府や議会への署名活動、あるいはデモ・集会などとともに、身近な議員への働きかけをする必要を感じます。自治体に対するとともに、地元選出の国会議員に対し、直接非核条約を批准するよう要請しましょう。核兵器廃絶は政党政派を超えた国民の願いです。

2020/11/26

§マスク美人

[弁護士 吉 田 恒 俊]

 コロナ禍第3波が押し寄せてきました。腰の重い政府もようやく動き出しました。皆さんマスクをしている方が多いです。私は忘れるのでいつもカバンに2つぐらい入れております。マスクをしていないと,買い物に行っても会議に出ても,お客様と面談するにしても肩身が狭い、どころかひんしゅくを買いそうです。


 今年はインフルエンザが極端に少ないのですが、これはマスクのせいだそうです。マスクは万病を防ぐのでしょうか。ますますマスクが手放せません。


 私は人の顔を覚えるのが苦手なのですが、マスクをされているとよけいに分かりません。「こんにちは」と声をかけられても分からないので、相手は気を利かせてマスクを外してくれますとようやく思い出すような始末です。


 その代わり、マスクをしている女性はきれいに見えます。老若を問わず女性は皆さん可愛くて美人になりました。そう思うのは私だけでしょうか?私は「マスク美人」と呼んでいますが、それは日本人の顔の上半分は美しく出来ているからだと思います。


 男女ともマスクの時代、相手方の視線はどうしても目に集中します。だから目力(めぢから)を養なうことがコロナの時代を生き抜く上で心がける必要を感じます。男性も付け睫毛(まつげ)が必要かもしれません。
2020/11/24

刑事弁護のはなし②

[弁護士 松本 恒平]

前回「刑事弁護のはなし①」では、私も含めて、刑事弁護に関わる弁護士の多くが、今の刑事司法における身体の拘束のあり方について、疑問を持っているということをお話しました。特に、逮捕されて72時間以内に勾留請求されると、まずは10日、さらにその後、検察官が勾留延長の請求をすると、10日間の勾留の延長が、とても簡単に認められてしまいます。つまり、逮捕されると、20日以上の身体の拘束がされることを覚悟しなければなりません。

さて、ここで、多くの方が、逮捕されるようなことをしなければよいだけではないか、と思われるかもしれません。確かに、その通りかもしれません。

それでは、次のような事件についてはどう思われるでしょうか。事案については、大幅に簡略化した事実関係についてのみ、お話します。

Aさんは、初めて訪れた飲食店で、初対面のBさんと口論になりました。店内には他にCさんがいました。つまり、店内には3人だけでした。口論の後、警察が店にかけつけました。警察に対し、Bさんは、Aさんに手首を強くつかまれたと伝えました。Aさんは、自分は手首などつかんでいないと、最初から警察に対して強く訴えていましたが、Cさんが、手首を掴んでいるところを見たと言ったために、逮捕されました。

まずは、このような状況をどう思われるでしょうか。確かに、Cさんが目撃したと言っている状況からは、逮捕されることはやむを得ないでしょうか。また、腕をつかんだことで逮捕されるということは意外に思われるでしょうか、それとも当たり前だと感じるでしょうか。ちなみに、Bさんは、全く怪我はしていません。

もちろん、この事件には続きがあります。
Aさんは、まず10日間の勾留がされることになりました。Aさんは、手首などつかんでいない、むしろ、自分が何度も胸を小突かれた、店内には防犯カメラがあり、そのカメラの映像を見てもらえれば、一部始終が映っており、自分が手を出していないことはわかるはずだ、なぜ自分が捕まっているのかわからないと、逮捕直後からずっと、弁護人にも捜査機関にも、なんども訴えます。

みなさんが弁護人や検察官の立場なら、この事件の真相はどのように考えるでしょうか。防犯カメラ映像を見て欲しいと、なんども訴えるAさんは、嘘をついているのでしょうか。Aさんは、防犯カメラ映像が確認された時点で、釈放されるという希望を持っていました。しかし、どれだけ待っても、映像が確認されることはありませんでした。なぜなら、後に明らかになるのですが、防犯カメラは、ダミーカメラであり、映像は存在しなかったからです。そうして、この事件は、取り調べにおいて、Aさんが腕を掴んだことを、認めるか認めないかということのみが焦点となりました。

被疑者が、無実を主張するような、否認事件と呼ばれるものは、最初の10日間の勾留だけでなく、さらに10日間の勾留延長されることが大半です。被疑者は、20日間、取調べにおいて、無実を主張し続けなければなりません。さらに、20日もの間、警察署に勾留されたなら、会社員でも自営業者でも、仕事はどうすればよいのでしょう。会社や取引先にどのように伝えればよいのでしょう。すでに、たくさんの仕事の予定が入っていた場合、それらすべてキャンセルするしかありません。

そもそも一般論として、なにもしていないかもしれない人が、安易に20日もの間勾留されるということ自体、疑われた以上は、仕方ないことなのでしょうか。最初の10日間の取調べをなんとか乗り越えた人が、さらに、10日間延長されたと告げられたとき、どれだけ絶望的な気持ちになるか、弁護人なら誰もがよく知っています。

結局、この事件でも、勾留延長が認められました。そして、Aさんは、なんとか約20日間無実を訴え続け、最後には、不起訴となりました。なんの客観証拠もありませんでした。不起訴というのは、なんの処分もなく釈放されるということです。もっと早く釈放することはできなかったのでしょうか。そもそも、この事件で、20日間も一体、何を調べることがあったのでしょうか。客観証拠がなにもないので、ただ自白を得ようとしていただけではないのでしょうか。

取調べにおいて、無実を訴え続けることは想像を絶する苦しさです。ずっと否認していた人が、心が折れてしまい、やったと認めれば外に出られるのではないか、そうであるなら、もう認めて外に出たいと言い出すことは、全く特殊なことではありません。このあたりに関連して、取調べを受ける人々が陥る、特殊な心理状態についても、機会があれば、お話したいと思います。

刑事弁護のはなし①

[弁護士 松本 恒平]

先日、私が国選弁護人を担当した人から、不起訴処分となったとの報告の電話がありました。とても弾んだ声でした。不起訴というのは、なにも処罰されることなく、釈放されることです。

私が担当した被疑者事件は、これで5件連続不起訴となりました。当事務所の吉田弁護士に報告したところ、5件連続というのは、なかなか興味深い成果なので、ブログに書いてみればどうかと言っていただき、この文章を書くことにしました。

私は、不起訴処分となることは、身体拘束を解かれ、すぐさま日常へと復帰できるという点で、無罪判決に勝るとも劣らない価値があると考えています。そのため、不起訴となるべき事件であるならば、私なりに最善の弁護活動をしてきたとの多少の矜持はあります。しかし、それでもやはり、私が担当した事件で不起訴とされたような人々は、そもそも、最大20日間にもわたる勾留をされるべき人たちではなかったのだと考えています。

勾留中は、主に警察署の留置施設に囚われ、捜査官から連日長時間の取り調べを受けます。まずは10日間勾留され、検察官が勾留の延長を請求すると、ほとんどの場合、さらに10日間の延長がなされます。私は、弁護人のなかでは、捜査の必要性をそれなりに認める立場です。しかし、それでも特に、現在の勾留延長の運用は、異常なものといわざるをえません。

このあたりをうまく説明したいところなのですが、なかなかに難しいところです。というのは、やはり、逮捕されたような人は悪人なのでしょう、やっていないといってもそう簡単に信用してはいけないのでは、という感覚が一般的にあるように思われるからです。刑事弁護を始める前は、私自身もそのように思っていました。ですので、私が、逮捕勾留されている人の多くは、どこまでも私達と変わらない一般人なのだとか、推定無罪なのだとか言ってみたところで、弁護士が、被疑者や被告人の権利を声高に主張しているに過ぎないのではと思われるかもしれません。

ですので、次回は、私が実際に経験したケースをもとに、お話をしたいと思います。刑事弁護人のほとんどが、現在の身体拘束のあり方には、強い問題意識をもっています。次回は、このあたりの感覚をうまくお伝えできたらいいなと思います。

<地球生命体の話 下> 宇宙は1400億年、地球生命はあと100年?

[ 弁護士 吉田 恒俊]

さて、宇宙は1400億年安泰という話から始まったお話も最後になりました。皆さんは宇宙人はいると思われますか?これまでの観測結果では「いない」という話になっています。何故いないのか?今回は宇宙的規模で高度な文明を持った生命体の存亡について考えたいと思います。

現在の人類は既に高度な文明を持ったと言えるでしょう。著名なアメリカの科学者は、人類は今後1000年スケールで太陽系に満ち、10万年スケールで銀河系宇宙に満ち、宇宙生命体として発展するであろう、と予測しています。それが事実なら、地球より何万年か前に発達した生命体により、今や宇宙は生命で満ち、宇宙人が頻繁に地球を訪問していなければならないはずです。

なぜなら、この銀河系だけでも太陽と同じような恒星が1000億個あります。その内1億個に地球型生命を持つ惑星があると仮定しますと、太陽を含めて1億個の恒星が高度な文明を持った地球型社会を持っていることになります。その10分の1すなわち1000万の惑星で宇宙旅行が出来るほどの高度な文明が発達したとすれば、銀河系だけでも1000万の星から何台ものUFOが宇宙を飛び回っているはずですね。ところが宇宙人がいないということは、宇宙旅行が出来るほど発展する前に、途中で滅んでいることになります。何故か?

詳しい計算根拠は分かりませんが、学者の計算では、宇宙では高度な文明を持った地球型社会は100年で滅んでいるそうです。歴史時代が始まって3000年で人類は地球生命の頂点に立って,今や地球を滅ぼすほどの高度な文明社会を築いていますが、この計算で行くと今から100年以内に人類は滅ぶことになります。その原因でもっとも可能性の高いのは核戦争・原発と環境破壊です。

第三次世界大戦はもう始まっている、という人もいます。アメリカでは最近も「人類滅亡後の地球」というドラマが作られています。
何だか嬉しくない結論ですが、現実を直視する叡智をもたなければならないと思います。

私たちは諦めてはなりません。このすばらしい地球を滅ぼしてなるものか!現代は、世界の中の「地球破滅やむなし勢力」と「絶対平和勢力」との対決の時代です。私たちは「絶対平和勢力」となって、「破滅やむなし勢力」と話し合い、時には身を挺してこの地球を守り、未来に引き継がなければなりません。

焦眉の課題は核戦争のおそれ、次に原子力発電と環境破壊が地球破滅の原因であることを肝に銘じて日々努力を怠らないようにしたいと思います。

安倍チャンネルを許さない-NHK放送受信料裁判を ご支援ください

[弁護士 佐藤 真理]

籾井勝人氏はNHK会長に就任した際の会見で、「政府が右を向けという時にNHKは左を向くことができない」と発言しました。以来、NHKの「安倍チャンネル化」(政府広報化)がいっそう進んでいます。

放送法には、テレビを購入すると、NHKとの間に、放送受信契約を結ばなけれならないと規定されています。この規定を根拠に、市民が、NHKの放送を受信するか否かにかかわらず、NHKは放送受信料を徴収しているのです。

Aさんは、約3年前からNHK放送受信料の支払いを中断していたことから、NHKは、昨年10月、34か月分の放送受信料4万3980円の支払請求訴訟を提起してきました。

裁判は奈良地裁で、本年3月4日から始まりました。私たち被告弁護団は、「放送受信契約は、受信の対価として受信料を支払うという継続的な『有償双務契約』である。市民は受信料を支払う義務があるが、他方、NHKは、放送法を遵守した放送を提供する義務を負っている。NHKが放送法第4条等が規定している「政治的に公平であること」、「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」などの義務を履行しない場合には、市民は、受信料の支払いを拒み、または一時留保することができると主張しています。

ところが、5月13日の第2回口頭弁論において、担当の森川裁判官が、突然予告もなく、「弁論終結」と宣言しました。
被告代理人の私が強く抗議し、「被告側はまだ主張立証を予定している。原告の主張への反論を準備している」と指摘して弁論の続行を求めましたが、森川裁判官は一言も発言せず、立ち上がったため、私は裁判官の忌避を申し立てました。被告のAさんを支援している「NHK問題を考える奈良の会」が提起した「森川裁判官の忌避を求める請願署名」が急速に広がり、5月24日までに合計1799筆が裁判所に提出されました。忌避申立てに関しては、現在も大阪高裁で審理中です。

私たちは、早期に弁論再開を勝ち取り、「安倍チャンネル化」しているNHKの報道の現状を告発し、その是正が図られない限り、放送受信料の支払いを一時留保できる権利の確立を求めて、全国的なたたかいを発展させていくつもりです。
ご支援をよろしくお願い致します。
2016年7月1日
佐藤真理

貴い命を奪うことなかれ

弁護士 佐 藤 真 理

先月中旬、長野県軽井沢町でスキーバスが崖下に転落した事故で、15人もの若者が死亡するという痛ましい事故が発生しました。
 規制緩和政策による運転手の過酷な労働環境が生んだ悲劇であり、規制緩和政策について、「人命尊重」の立場からの抜本的見直しが必要と痛感しています。

 奈良県を東西に走る「名阪国道」は、「1000日道路」とも言われ、70年の大阪万博に間に合わせるために、山を削って強引につくったため、急カーブ、急傾斜が多く、自動車専用道路にもかかわらず、最高速度は60キロと制限されるという、いわくつきの危険な道路です。長らく、全国の自動車専用道路10キロ当たりの死亡事故発生件数が「ワースト1」といわれ、幾多の悲惨な事故があり、現在でも毎年10件近くの死亡事故が発生しています。

 名阪国道を通るとき、私はいつも20年ほど前の悲しい事故を思い出します。深夜、20歳の青年の連転するトラックが乗用車に追突し、車が炎上して若い男女4人が亡くなりました。居眠り運転事故でしたが、弁護を担当した私は執行猶予を目指して努力しました。
 父親の急死のため青年が大学を休学し、運送会社に動め出して25日目の事故でした。13日間連続で働き、事故直前3日間の拘束時間は一日平均16時間38分に及び、睡眠は2時間27分という極度の睡眠不足状態でした。事故前日は午後9時半に帰宅し、わずか1時間50分後に居眠り状態となり暴走したのです。

 禁固2年の実刑判決となりましたが、私は今では実刑でよかったのかなと思い直しています。4人の命を奪ったという重荷を一生背負う青年にとって、刑に服したことは多少とも心の救いとなっているのではと思うからです。
 青年とお詫びに上がった時、「あなたはともかく生きているんだから・・・」と涙ぐまれたご遺族の姿を忘れることができません。
                                                                    (2月2日)

安倍政権の野望への審判を

[弁護士 佐藤真理]

 今日は稀代の悪法=秘密保護法の施行日ですが、今月14日は、衆議院選挙の投票日を迎えます。政府与党は、経済問題に集中し、秘密保護法や集団的自衛権の行使容認、即ち「憲法問題」については、議論を避けています。
 しかし、選挙が終われば、国民の信任を得たとして、次期通常国会に、集団的自衛権の行使を具体化する十数本の「安全保障関連法案」を出してくることは確実です。
 集団的自衛権は、我が国が攻撃を受けていないのに、他国が攻撃を受けたときに、我が国も他国とともに武力を行使するというもの。つまり自衛とは無関係に、他国の戦争に我が国が参加していくということです。実際には、地理的限定もなく、地球的規模で米国の戦争に参戦していくことになります。
 
 戦前・戦中の国民は、秘密保護法、治安維持法のもと、目・耳・口をふさがれて、中国やアジアへの侵攻を、「自存自衛の戦争」、「アジア解放の正義の戦争」と欺かれて、無謀な戦争に駆り立てられ、310万人の日本国民、2000万人のアジア諸国民が犠牲となりました。
 このような痛苦の歴史の反省の上に、戦後日本は平和国家・民主国家として再出発しました。憲法前文には、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」と定めています。
憲法9条と「平和的生存権」(前文)という先駆的な平和憲法のもと、戦後69年間、日本は、戦争で他国民を一人も殺さず、殺されることもなかったという実績を大事にしたいと思います。

 今の日本は、戦前の1930年代のようだと警告する人がいます。この「戦後」を、新たな「戦前」にしてはなりません。
 再び、日本を「戦争する国」に変えることを許すのか、憲法9条を守り、活かし、「戦争のない世界」へ貢献していく道を選ぶのか、が問われる選挙です。
 侵略戦争の歴史を忘れ、「戦争する国」、「軍事大国」を目指す安倍政権の野望に対し、主権者国民が明確な審判をくだすときだと確信しています。

                                      2014年12月10日