[弁護士 佐藤 真理]
生命、身体、財産などを侵害する犯罪「行為」を処罰するのが刑事法の大原則。これをくつがえし、犯罪を「計画」(合意)しただけで国民の内心を処罰し、「監視社会」をもたらすのが「共謀罪」です。共謀罪の対象犯罪は277もあり、刑法に規定されている約170の犯罪数を大幅に超えています。
人権擁護と社会正義の実現を標榜する弁護士会は、強制加入団体(どこかの弁護士会に登録しないと弁護士業を行えない)ですが、日弁連及び全国の52単位弁護士会はこぞって、共謀罪法案に反対してきました。共謀罪法の成立を受けて、この違憲立法の廃止を目指して、適用させない取り組みをすでに開始した弁護士会もあります。
法曹界のみならず、学者・文化人、日本ペンクラブ、9条の会、ママの会、未来のための公共(若者)など広範な市民が反対運動に立ち上がりました。どの世論調査でも、「今国会で急いで成立させる必要はない」が7割、8割を超えていました。
ところが、共謀罪法案は、衆議院の法務委員会と本会議で強行採決され、参議院では、わずか18時間しか審理が行われていない段階で、本会議へ「中間報告」して、法務委員会の審理を打ち切り、委員会採決を省いて、本会議採決を強行するという暴挙に及んだのです。
安部首相は「丁寧に説明を積み重ね、国民の皆さんのご理解を得たい」などと口では言いながら、特定秘密保護法(2013年12月)、戦争法(2015年9月)そして今回の共謀罪と、対決法案の強行採決が常態化しています。
今回の「加計学園」の獣医学部新設に安倍首相や萩生田副官房長官ら側近が深く関与しているとの文科省文書が次々と明らかになる中、追及を逃れるために政府は国会閉幕を急いだのです。「森友学園」を含め、安倍政権による国有財産や国政の「私物化」は目に余ります。
共謀罪の強引な採決と露骨な「疑惑隠し」を狙った国会閉幕・審議拒否に対し、国民の怒りが広がっており、安倍内閣の支持率は10ポイント前後も急落しました。
ようやく、安倍首相の本質が国民的に露呈されつつあります。「憲法改正」を実現した首相として名を後世に残したいとの安倍首相の野望を阻止するために、今年の暑い夏も頑張る決意です。
(6月26日)