「奥西勝さんの冤罪を晴らす奈良の会」への参加を呼びかけます。

[弁護士 佐藤 真理]

国民救援会をご存じでしょうか。1928年に結成された人権団体で、私は、現在、奈良県本部の会長を務めています。戦前は、治安維持法の弾圧犠牲者の救援活動を行い、戦後は、日本国憲法と世界人権宣言を羅針盤として、弾圧事件・冤罪事件・国や企業の不正に立ち向かう人々を支え、全国で100件を超える事件を支援しています。

奈良県にも「名張毒ぶどう酒事件」と呼ばれる著名な冤罪事件があります。59年前、1961年3月に、名張市の実質飛び地と隣接する奈良県山添村にまたがる葛生という集落の懇親会酒席で振る舞われたぶどう酒に毒物が混入され、ぶどう酒を飲んだ女性17人が中毒症状を起こして、5人が死亡した事件です。

逮捕・起訴されたのは奥西勝さん、当時35歳でした。刑事裁判で死刑判決が確定したが、冤罪を訴えて9度にわたる再審請求を起こし、死刑確定後43年間にわたり死刑執行が見送られ続けたものの、奥西さんは、2年前、89歳で獄死しました。

冤罪が晴らされる可能性があったのは3度。最初は1964年の1審・津地裁の無罪判決です。二度目は第7次再審における2005年4月の名古屋高裁第1刑事部の再審開始決定です。3度目は、前記再審開始決定を取り消した名古屋高裁第2刑事部決定に対する特別抗告に対して2010年12月の最高裁決定が、原決定は審理不尽として破棄しながら、審理を名古屋高裁に差し戻した時です。日弁連は、「すでに重大な疑いが存在することは明らか」であるから原決定を取り消した上で、最高裁が自ら再審開始決定をすべきだったと、再戻しについて厳しく批判しました。

私は弁護士として42年。刑事事件に力を入れていた時期があり、無罪判決も3つ、経験しました。現在は多忙をきわめているため、弁護団に加わって全力投球する余裕はありませんが、名張毒ぶどう酒事件は、地元の事件でもあります。「名張毒ブドウ酒事件奈良の会」の皆さんと力を合わせて、奥西さんの遺志をついで、第10次再審に取り組んでおられる妹の岡美代子さんを支え、再審開始・再審無罪を勝ち取るために、尽力していく決意です。
2020年9月22日

カテゴリー: sato

奈良学園大学整理解雇事件      1審勝訴判決の報告

[弁護士 佐藤 真理]   
                   
1 7月21日、奈良学園大学事件で画期的な原告勝訴判決が奈良地方裁判所(島岡大雄裁判長)から言い渡され、テレビ・新聞で報道されました。

 少子化などを理由とする大学再編・学部閉鎖を口実に、奈良学園大学の教授ら7名を2017年3月末に整理解雇・雇止めした事件に関し、奈良地裁は、教授ら7名のうち5名に対する解雇が違法・無効であるとして、奈良学園に対して、地位確認とともに、未払賃金・賞与として総額1億2000万余円を支払うよう命じました。

 なお、65歳定年後再雇用中の2名については、70歳までの雇用継続の期待に合理的理由があると認めつつも、無期労働契約の労働者と比べて、雇止めによる経済的打撃は大きいとは言い難く、有期労働契約の労働者を優先的に雇止めすることには合理性があるとして、雇止めを有効とされたのは残念です。

2 事件の経過
 奈良学園は、1984年に奈良産業大学を開校し、2014年に奈良学園大学と改称。2012年、ビジネス学部・情報学部を現代社会学部に改組し、新たに人間教育学部、保健医療学部を新設する「再編」を計画しました。現代社会学部の認可が下りない場合は、ビジネス学部・情報学部は存続させるとの教授会の付帯決議がなされていましたが、奈良学園は、2013年に現代社会学部の申請を取り下げながら、付帯決議を撤回させ、2014年4月からビジネス学部・情報学部の学生募集を停止した上、両学部の教員約40名が「過員」になったとして、2017年3月末までに「転退職」するように迫ったのです。

 これに反対した大学教員らが、2014年2月に関西私大教連傘下の教職員組合を結成し、その後、組合員を増やして奈労連一般労組にも加入して、団体交渉等の活動を続けました。奈良学園は、解雇回避の努力を尽くさず、転退職に応じなかった約40名の教員に対し、2017年3月末、解雇・雇止めを強行したため、組合員8名が、原告となって本裁判を提起したのです。

3 争点と本判決の意義
 最大の争点は、少子化を理由とする学部の統廃合の際に、学校法人は、廃止される学部(ビジネス学部・情報学部)に所属する大学教員を解雇することが許されるのか否かということでした。

 奈良学園は、大学教員は、学部、職種とも限定されており、配置転換の義務はなく、整理解雇法理は適用されないと主張しましたが、本判決は「本件解雇は、被告の経営上の理由による人員削減のために行われた整理解雇に他ならない」として、学部閉鎖を理由とする解雇・雇止めにも、整理解雇法理を適用しました。

 整理解雇法理とは、整理解雇の4要件、即ち、①人員削減の必要性、②解雇回避の努力、③人選の合理性、④説明協議義務、のいずれかを満たさない解雇は労働契約法16条に違反し、解雇権の濫用に当たり無効とする法原則です。

判決は、①人員削減の必要性について、ビジネス学部・情報学部の学生募集停止により大学教員が「過員」状態になったといえるとしましたが、奈良学園は646億円もの純資産を有している上、社会科学系の第3の学部の設置検討をすすめ、これを合理的な理由なく凍結し、整理解雇・雇止めの意思表示後に第3の学部の設置検討を再開していることを指摘し、これらの対応は大学教員削減の必要性を強調することと整合せず、法人は、原告らを「解雇しなければ経営破綻するなどの逼迫した財政状態ではなく、人員削減の必要性が高かったということはできない」と判示しました。

 ②解雇回避努力については、希望退職の募集、事務職員への配置転換希望の募集などの奈良学園の対応を認定しましたが、「原告らは、大学教員であり、高度の専門性を有する者であるから、教育基本法9条2項の規定に照らしても、基本的に大学教員としての地位の保障を受けることができると考えられる」とし、奈良学園が、「原告らを人間教育学部又は保健医療学部に異動させることができるかどうかを検討する前提となる文部科学省によるAC教員審査を受けさせる努力をした形跡は認められない」とし、「解雇回避努力が尽くされたものと評価することは困難である」と判示しました。

 ③人選の合理性についても、選考基準が制定されてはいるものの、当該選考基準を運用する前提となるAC教員審査を受ける機会を付与していないから、当該選考基準を公正に適用したものとはいえないと判示しました。

 ④手続の相当性についても、奈良県労働委員会において、2016年7月に組合と法人が受諾したあっせん案(「労使双方は、今後の団体交渉において、組合員の雇用継続・転退職等の具体的な処遇について、誠実に協議する。」)を踏まえた「組合との協議が尽くされたと言い得るかは疑問が残る」と判示しました。

4 労働委員会の不当決定を乗り越える。
 私は、自交総連の小林明吉議長(故人)と二人三脚で、奈良県及び三重県の労働事件を多数取り扱ってきましたが、労働者・労働組合の救済機関である労働委員会を活用するのが、常套手段でした。奈良県労働委員会で取扱う不当労働行為救済申立事件の7割以上を担当し、次々と勝利命令を勝ち取り、これをベースに裁判でも勝利解決を図るという時期が長く続きました。

 今回の奈良学園事件でも、組合は、裁判と併行して、奈良県労働委員会に不当労働行為救済申立てを行いました。大学教員の中で年齢の若い3名の原職復帰を柱とする和解案が労働委員会から提示された経過もあり、全面勝利の救済命令は確実と判断していたところ、不誠実団交が認められただけで、不利益取り扱い及び支配介入の不当労働行為が棄却されるという想定外の不当決定を受けたため(2019年1月)、心機一転、これを乗り越えるために、弁護団と原告団は総力を結集して主張立証を重ねてきたのです。

 大学教員に対し、希望退職や事務職員ないし中学・高校教員への配置転換募集等を提案するだけでは、大学教員の雇用継続とはならず、「解雇回避努力としては不十分」と判示した本判決は、大学教員としての雇用確保努力を尽くすことを求めたものと高く評価できます。久しぶりに明快な労働勝利判決を得られたものと嬉しく思っています。

5 奈良学園は控訴し、原告側も雇止めの無効が認められなかった二人が控訴し、大阪高裁に舞台が移ることになりました。全面勝利を目指して、引き続き奮闘していく決意です。
 弁護団は、大阪の豊川義明・鎌田幸夫・中西基・西田陽子弁護士と私の5人が担当しました。

カテゴリー: sato

NHK裁判が結審

[弁護士 佐藤真理]

私のライフワークの一つである「NHK受信料裁判」が今月11日に結審しました。最終準備書面の提出に向けて、ゴールデンウイーク以降、作業に忙殺され、まともに休みを取ることはできませんでした。146頁に及ぶ最終準備書面は、弁護団と原告団の努力の結晶です。
この機会に、本裁判の中間総括をしておきたいと思います。

<国民のためのNHKをめざして>
NHKの視聴者は、受信料を支払うだけの存在であってはならないと考えています。主権者として、NHKに働く人達と共同して、「政府のためのNHK」から「国民の権利を擁護し、民主主義の前進に寄与するNHK」に変えていくために、主体的な役割を果たすことが求められているのです。奈良地裁の受信料裁判はその一つの実践です。

<放送法4条の遵守はNHKの義務>
放送受信契約は、受信の対価として、受信料を支払うという「有償双務契約」です。
放送は、国民の知る権利に奉仕するものですが、知る権利に応える情報の多様性は、放送事業者の自由競争に委ねるだけでは十分に確保できません。そのために、放送法4条は、放送事業者の放送番組編集の自由に対する「公共の福祉」に基づく制約として、放送番組の編集にあたって、「政治的に公平であること」、「報道は事実を曲げないですること」、「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」などを義務付けているのです。
私達は、本裁判において、NHKがニュース報道番組において、放送法4条および同趣旨の国内番組基準を遵守して放送する義務があることの確認を請求しています。

<最高裁判決は放送内容は判断せず>
2017年12月の最高裁大法廷判決は、「放送は、憲法21条が規定する表現の自由の保障の下で、国民の知る権利を実質的に充足し、健全な民主主義の発達に寄与するものとして、国民に広く普及されるべきものである。」と判示の上、テレビの購入者がNHKの放送を視聴していないとして受信契約の締結を拒否している場合にも、放送法64条により受信契約の締結が義務付けられているとして、「放送法64条は合憲」と判示しました。
しかし、この最高裁判決は、NHKの放送内容については判断していません。ニュース報道番組が「アベチャンネル」状態に陥っていないのかどうか、公共放送にふさわしいニュース報道を行っているか否かについては、全く判断していません。

<歴史的裁判>
本件訴訟は、国民の知る権利と民主主義の発達に寄与する公共放送の在り方を正面から問う歴史的裁判だと確信しています。
NHKは、本裁判において、「請求の棄却」や「訴えの却下」を求めるだけで、原告申請の証人5名、原告代表者5名の尋問に対する反対尋問も放棄しました。
私たちは、2016年7月以降、丸4年に亘り、19回の口頭弁論を重ね、訴状・準備書面等を30通、407点に及ぶ書証を提出して、主張・立証を尽くしてきました。

11月12日には、人権擁護の最後の砦である裁判所が「歴史的な判決」を言い渡されるものと期待しています。
無論、第一審判決は、私たちの運動の第一歩の到達点を刻むに留まる可能性もあります。
いずれにせよ、「国民の知る権利」と「民主主義の発達に寄与」する公共放送の実現をめざす私達の運動に収束はありません。高裁及び最高裁とたたかいは続き、同種訴訟が他地域でも提起されていくことでしょう。
2020年6月14日

カテゴリー: sato

外出を控えて、コロナ禍をやり過ごそう

[弁護士 佐藤 真理]

新型コロナウイルスが世界中を席巻し、大変な毎日になっていますが、皆様、いかがお過ごしでしょうか。

学校の休校も長引き、家では保護者の方も毎日の子供のことで大変な思いをされていると思います。

休業要請を受け、家賃、もろもろの支払い、生活費などが重くのしかかり、来月からの生活が心配でならないという方がたくさんおられます。
「内定取り消し」を受けて就職できない、「自宅待機」を命じられ、賃金が大幅に減らされて困っているという方もおられます。

そのような方々が、当事務所にも、ご相談に来られています。
しかし、今は、外出しない方が安全ですので、奈良合同法律事務所では、当分、電話相談を活用することにいたします。
心配なこと、お悩みのことや解決できない問題を抱えた方は、ぜひ、奈良合同法律事務所に気軽にお電話ください。

事務局の簡単な聞き取りの後、できるだけ弁護士が、直接お話をお伺いいたします。
基本は、10分間の相談となりますが、経験上、10分程度の相談でも8割以上は解決の目途が立てられます。

問題の解決は早ければ早いほど納得のいく結論がでますので、問題が大きくなる前にご相談下さい。全力でお手伝いさせていただきます。

もちろん、資料などを持参してもらい、直接お会いした上でのご相談が原則ですので、体調が悪くない限り、来所してくださっても大丈夫です。

人類にとって初めてのウイルスですが、なんとか乗り切り、また、平穏な日々を取り戻すべく、所員一同、頑張りたいと思っています。

電話 0742-26-2457

2020年4月16日

カテゴリー: sato

新進気鋭の女性弁護士を迎えます

[弁護士 佐藤 真理]

今年も、早いもので、もうすぐ4月となります。
いつもでしたら、春爛漫で心うきうきの季節ですが、今年の春は様相が違いますね。

新型コロナウイルスが、なかなか収まらず、毎日、どのように過ごせばいいのか、悩みは尽きません。

私も、先日、トイレットペーパーを買いに行ったら「一人にひとつ」ということでした。もう少し、辛抱してじっとしている、ということでしょうか。

今年のこの経験は、ぜひ、記録して次に生かしたいと思い、メモにしています。

「奈良合同法律事務所」は、この4月に
大久保陽加弁護士を迎えて『弁護士4人体制』になり、
よりパワーアップします!

☆ 判断力と人間力に卓越した超ベテランの吉田恒俊所長
☆ 不屈の戦闘性を誇る私、弁護士の佐藤真理
☆ 新進気鋭の切れ味鋭い松本恒平弁護士
☆ 東京で2年のキャリアを積んだ女性の大久保陽加弁護士

この4人で、日常の小さな悩みから、相続、離婚、解雇問題など、人生の分かれ道になる大きな問題まで、その他のあらゆるジャンルのご相談をお受けさせていただきます。

悩んだらすぐに相談すると解決も早いです。
相談料は、30分3300円(税込み)です。一人で抱え込まず、まずは気楽に電話予約して私たち弁護士にその悩みを話してみませんか。

お待ちしております!
2020年3月23日

カテゴリー: sato

夏の思い出

[弁護士 佐藤 真理]

ようやく秋の訪れを感じる今日この頃です。
今年の夏の思い出は、8月に長女が参加した千葉県習志野市での水泳大会に二日がかりで応援に行ったことです。
東日本の医学部のある38大学の大会で、長女は50メートル背泳で8位入賞。200メートルリレーでは、第2泳者を務め、見事に銅メダルを獲得したのです。

何故か秋田大学の応援席から観戦しましたが、40数年前の、私の学生時代を思い出しました。武道館で開かれた少林寺拳法の関東大会・全日本大会に3回ほど、選手として参加したことがあります。多少の違いはあるものの、各大学が選手の応援を競い合う熱気と雰囲気はほぼ同じで、思わず熱くなりました。

長女が小・中学生のころ、あちこちの温水プールに毎週のように通ったことを思い出します。長女は私の両足の間を潜って通り抜けるのが得意でした。来年は4回生で、記録の更新が今から楽しみです。

昨年11月には、三男のアメフットボールの最終試合に応援に行きました。アメフット観戦は初めてでしたが、激しいぶつかり合いの中、残り1ヤードで相手が新規攻撃権を得て攻めようとした際、三男が相手のランを読んで見事タックルで潰し、攻撃権を奪い返すなど大活躍。結局、大差で勝利を収めることができ、親子ともども大喜びでした。

学生時代、長男はサッカー部、次男は野球部で熱心に活動しましたが、忙しさにかまけて応援に行けず、少し、後悔しています。

2019年9月16日

カテゴリー: sato

夢のような10日間

[弁護士 佐藤 真理]

阪神タイガースファンの次男が、昨年からシーツ君(ポメラニアンの雄1歳)を千葉県の賃貸マンションで飼育していました。4月から研修医を終えて大学に戻るため、シーツ君と別れ、私たちが預かりました。

シーツ君は私が夜、帰宅すると、すぐ飛んで迎えに来て、私の手や顔をぺろぺろとなめまわします。散歩に連れて行くとチョコチョコと勢いよく駆けては、草をクンクンとかぎまわります。
妻が東京に出かけて留守をした夜は、シーツ君がすぐ足元で休んだため、私はよく眠れませんでした。

可愛いシーツ君との夢のような10日間が過ぎ、昨日、知人にお譲りすることになり、お届けしました。忙しい私は無論、妻も、最近、講演などに出かけることが多く、残念ですが、シーツ君との別れを決断しました。高校生のお嬢さんもおられ、可愛がってくれることは確実で、安心しています。

10年後、シーツ君の孫でも飼える日が来ることを楽しみに、心新たに、当面、弁護士業務と人権擁護活動に専念します。

シーツ君、本当にありがとう。元気で、長生きし、子犬も沢山つくってくださいね。
君のことは決して忘れません。

2019年3月11日

カテゴリー: sato

安倍首相の「改憲暴走」が懸念される

[弁護士 佐藤 真理]

安倍首相が、今月20日の自民党大会で総裁3選を勝ち取り、その勢いで改憲国民投票に向けて暴走する危険性が高まっています。

来年4月の統一地方選挙、4月末から5月初めの天皇代替わり等の関係から日程的には困難との見方もありますが、96年参議院選挙時のように野党共闘が進展すると、来年7月の参議院選挙で改憲勢力が3分の2を割り込むことは確実です。

「改憲のチャンスは今しかない」と、安倍首相の意を受けて、自民党衆議院議員100人が秋の臨時国会に「改憲原案」を提出し、年内にも衆議院・参議院で採決を強行する可能性は否定できません。両院各3分の2以上の賛成で改憲原案を成立させて、改憲「発議」とし、2ヶ月間の国民運動期間を経て、来年3月までに国民投票の実施に踏み切る可能性が否定できません。

欠陥だらけの国民投票法の下での国民投票で護憲派が勝利できるというのは幻想と思います。3000万署名を成功させ、改憲発議そのものを阻止するために全力を上げることが、今、求められていると思います。

自由と人権、平和と民主主義の憲法を守り、活かすために微力を尽くします。
(2018年4月1日)

カテゴリー: sato

父との別れと非戦の決意

[弁護士 佐藤真理]

昨年12月13日、大分市内のホームで暮らしていた父が94歳で死去した。
6年前、母を肺がんで亡くしており、ついに両親がいなくなった。

十数年前から、親と別れる日が来ることを自覚し、なるべく、多く大分に帰省するように努めてきた。母が死去後は、どんなに忙しくとも月に1度は、帰省し、夕食を父と共にし、いろいろな話をしてきた。やはり我が家の子ども達の話が中心であった。家に一泊して翌日午前中に再訪問し、「男はつらいよ」などのDVDを見たり、囲碁を楽しむなどして来た。大津に住む妹も月に一度は帰省して種々の世話をしていた。

「100歳まで生きる」と言っていたのに、残念至極だが、4人の子ども達がそろって第1志望大学に合格し、長男と次男は、既に研修医として働いており、おじいちゃんとしては大満足であったようだ。

しかし、親は存在するだけでありがたいとしみじみ思う。父のこと、母のことを時々思い出しては、もっともっと大事にしておけば良かったとの悔いの思いを禁じ得ない。

あの悲惨な戦争の時代を生き抜き、戦後の苦難の中、私と妹を大学まで育ててくれた両親への感謝の念は尽きない。

まもなく終戦から73年。二度と愚かな戦争への道を歩んではならない。非戦の平和憲法を守り、活かしていくために、自由、人権、平和と民主主義の前進のために、微力を尽くす決意を新たにしている。
(2018年7月17日)

カテゴリー: sato

9条改憲を許してはならない

[弁護士 佐藤 真理]

昨年5月、安倍首相は憲法9条の1項・2項はそのままにした上で、自衛隊の存在を明記する条項を付け加える9条改憲を2020年に実現したいと発言しました。

6年前公表の自民党改憲草案では「陸海空軍その他の戦力は保持しない。国の交戦権は認めない。」との9条2項を削除し、「国防軍を保持する」と明記していました。国防軍との名称ですが、その任務は、自衛のための活動だけでなく、「国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動」=米軍指揮下の多国籍軍に参加し、海外での武力行使や兵站活動を行うことが含まれていたのです。

首相の自衛隊明記加憲案は、憲法9条の恒久平和主義に対する国民の支持が高いことから、国民投票を視野に、公明党などの抱き込みを意図した「変化球」です。首相は、「自衛隊の存在を憲法に明記するだけで、自衛隊の任務や活動にはなんら変化はない。」と述べていますが、真っ赤なウソです。首相がいうように、自衛隊が今でも合憲で、自衛隊明記加憲によって自衛隊の任務や活動内容になんら変化がないのであれば、800億円もの国費を使って国民投票をする意味はないはずです。

そもそも、憲法9条の改定は、国民の声ではありません。自衛隊明記加憲案には、立法事実(立法の基礎となり、その合理性を支える社会的経済的事実等)が存在していないのです。

首相らの本心は、自衛隊を「戦力=軍隊」と位置づけ、米軍とともに海外で武力行使できる「軍事大国」を目指そうとしているのです。

3月下旬に自民党が取りまとめた自衛隊明記加憲案は、集団的自衛権の「限定」行使を認めた安保法制=戦争法を合憲化し、集団的自衛権の全面行使を可能とし、憲法9条2項の空文化・死文化をもたらすものです。

森友学園の国有地取引をめぐる公文書改竄事件で、安倍政権による国民主権と議会制民主主義の蹂躙が大問題となる中、改憲に突き進む首相らの姿はあまりに異常です。

安倍内閣を早期退陣に追い込み、政治の流れを変えましょう。
(2018年3月26日)

カテゴリー: sato

総選挙で安倍政治を終わらせよう

[弁護士 佐藤 真理]

安倍内閣は、本年6月、「森友学園」「加計学園」問題での安倍政権による国有財産や国政の「私物化」疑惑に対する野党の追及を避けるために通常国会を早々と閉幕しました。

野党4党が6月22日、憲法53条に基づいて、臨時国会の開催を要求したところ、安倍政権はまともな理由も示せず、拒否し続けました。憲法53条には、「いずれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣はその召集を決定しなければならない。」と明記されています。期限の明記はありませんが、「すみやかに召集」する義務があることは明らかです。(ちなみに、自民党の2012年改憲草案には、「要求があった日から20日以内に臨時国会が召集されなければならない。」とあります。)

野党の要求から3ヶ月余りも遅れて、臨時国会が9月28日にようやく召集されることが決まりましたが、突然、安倍首相は、臨時国会の冒頭で衆議院を解散し、10月下旬に総選挙を実施する公算が確定と報道されています。
民進党から離脱者が相次ぐなど混乱しており、立憲野党4党(民進・共産・社民・自由)の本格的な共闘態勢が整っていないとみて、森友・加計学園問題での野党の追及を受ける前に解散に踏み切ろうというのです。
「国会で追及されるのを逃げる自己保身解散」(前原民進党代表)であり、党利党略のご都合主義解散といわなければなりません。
しかし、解散権行使のご都合主義批判よりも、ついに主権者国民が安倍暴走政治「ストップ」の明確な審判を下す時が到来したと歓迎すべきではないでしょうか。

安倍内閣は、この3年間、国民の批判の声を無視して、特定秘密保護法(2013年)、戦争法(2015年)、そして今回の共謀罪法と、強行採決を繰り返してきました。
7月2日の東京都議選挙で自民党は歴史的な敗北を喫し、安倍首相は「スケジュールありきではない」と改憲日程について「軌道修正」的発言もしましたが、任期中の改憲(それも「9条」改憲)を目指すとの方針に変更はありません。

憲法施行70年の5月3日、安倍首相は、憲法9条の1項、2項はそのまま残し、新たに自衛隊の存在を憲法に明記する憲法「改正」を東京五輪開催年の2020年に施行することを目指すと公言しました。
「9条加憲案」は、国民の多くが支持している自衛隊の存在を憲法に明記することで、違憲の疑いを晴らし、いざという場合に命がけで働く自衛隊員の士気を高めるために必要で、自衛隊の役割に何ら変更を加えるものではないとの説明がしきりにされています。

しかし、重要なことは、自衛隊は、かつての「個別的自衛権の行使のみを認める」(1972年政府見解)の自衛隊=「専守防衛」の自衛隊ではなくなっているということです。今日の自衛隊は、7・1閣議決定(2014年)に基づいて制定された「戦争法制」で容認された存立危機事態での集団的自衛権の行使や戦闘地域での米軍等への弾薬輸送を含む兵站活動等を担う自衛隊です。
9条加憲案は、戦争並びに武力の行使及び威嚇を禁止し、一切の戦力の保持と交戦権を否認した9条1項、2項と激しく矛盾し、9条1項、2項の空文化を招くことは明らかです。

安倍首相は、祖父岸信介が果たせなかった憲法「改正」を実現した首相として歴史に名を残したい、日本を再び「戦争する国」、軍事「大国」にしたいとの異常な執念に取り憑かれています。
自公と維新は衆参両院で3分の2以上の議席を保有していますが、今度の総選挙で、昨年夏の参議院選挙以上に、立憲野党の選挙協力ができると、与党は議席を減らし、衆議院3分の2を大きく割り込むことは必至です。安倍改憲を許すか否か、財界大企業に奉仕し、国民の暮らしを蔑ろにする安倍政治を転換する道に踏み出せるのか、重大な岐路に立っています。

安倍改憲阻止、野党連合政権樹立のために微力を尽くす決意です。
今月8日に発足した「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」が提唱する3000万署名にも、是非、ご協力下さい。
2017年9月19日

カテゴリー: sato

目に余る安倍内閣の暴走 ――「共謀罪」成立

[弁護士 佐藤 真理]

生命、身体、財産などを侵害する犯罪「行為」を処罰するのが刑事法の大原則。これをくつがえし、犯罪を「計画」(合意)しただけで国民の内心を処罰し、「監視社会」をもたらすのが「共謀罪」です。共謀罪の対象犯罪は277もあり、刑法に規定されている約170の犯罪数を大幅に超えています。

人権擁護と社会正義の実現を標榜する弁護士会は、強制加入団体(どこかの弁護士会に登録しないと弁護士業を行えない)ですが、日弁連及び全国の52単位弁護士会はこぞって、共謀罪法案に反対してきました。共謀罪法の成立を受けて、この違憲立法の廃止を目指して、適用させない取り組みをすでに開始した弁護士会もあります。

法曹界のみならず、学者・文化人、日本ペンクラブ、9条の会、ママの会、未来のための公共(若者)など広範な市民が反対運動に立ち上がりました。どの世論調査でも、「今国会で急いで成立させる必要はない」が7割、8割を超えていました。

ところが、共謀罪法案は、衆議院の法務委員会と本会議で強行採決され、参議院では、わずか18時間しか審理が行われていない段階で、本会議へ「中間報告」して、法務委員会の審理を打ち切り、委員会採決を省いて、本会議採決を強行するという暴挙に及んだのです。

安部首相は「丁寧に説明を積み重ね、国民の皆さんのご理解を得たい」などと口では言いながら、特定秘密保護法(2013年12月)、戦争法(2015年9月)そして今回の共謀罪と、対決法案の強行採決が常態化しています。

今回の「加計学園」の獣医学部新設に安倍首相や萩生田副官房長官ら側近が深く関与しているとの文科省文書が次々と明らかになる中、追及を逃れるために政府は国会閉幕を急いだのです。「森友学園」を含め、安倍政権による国有財産や国政の「私物化」は目に余ります。

共謀罪の強引な採決と露骨な「疑惑隠し」を狙った国会閉幕・審議拒否に対し、国民の怒りが広がっており、安倍内閣の支持率は10ポイント前後も急落しました。

ようやく、安倍首相の本質が国民的に露呈されつつあります。「憲法改正」を実現した首相として名を後世に残したいとの安倍首相の野望を阻止するために、今年の暑い夏も頑張る決意です。
(6月26日)

カテゴリー: sato

違憲の「共謀罪」を廃案に追い込もう

[ 弁護士 佐藤 真理 ]

今月11日、自民・公明と維新が「共謀罪」法案について修正合意に達し、今週にも衆議院で同法案が強行採決される危険が高まっています。
しかし、3党の修正合意は、共謀罪の捜査にあたり適正の確保に十分配慮すること、取り調べの録音・録画の制度のあり方を検討すること等に過ぎず、修正の名にも値しません。

共謀罪法案は、「犯罪行為」に及んだ場合に処罰するという刑法の基本原則をくつがえして、二人以上の人が犯罪行為を「計画・相談」しただけで処罰できるとする人権侵害の恐れの強い違憲の法案で、過去3回廃案となっています。

安部首相は、テロ対策の法律であり、従来の共謀罪と違い、一般市民が対象とされることはないと繰り返していますが、事実を偽るものです。
労働組合の活動、憲法改悪反対・原発反対・沖縄辺野古基地建設反対などの市民団体の活動に対し、捜査当局の判断だけで「組織的犯罪集団」に一変したと認定されて、不当弾圧を受ける危険性があります。

例えば、労働組合が賃上げを要求し、社長が応諾するまで徹夜覚悟の団体交渉をしようと皆で意思統一すると組織的監禁罪の共謀成立となりかねません。地域住民が高層マンション建設反対運動として座り込みを相談・計画し、住民を動員する連絡を分担したら、組織的威力業務妨害罪の共謀が成立となりかねません。

「共謀罪」の処罰のためには、捜査手段のいっそうの強化が必要となり、盗聴、盗撮などの拡大につながります。昨年5月の刑事訴訟法の一部改正で警察による盗聴(通信傍受)の対象が一般犯罪まで拡大され、電話やメールの盗聴が可能とされています。さらなる盗聴、盗撮等の拡大により、警察国家化が懸念されます。

特に、恐ろしいのは、自首すれば刑を減軽又は免除するとの規定が用意されていることです。戦前の治安維持法時代には、特高警察が共産党や民主団体にスパイを潜入させて、スパイの自首により、活動家を一網打尽にし、スパイだけは刑を免れるという事例が頻繁に見られたことを想起すべきでしょう。
相互監視の息苦しい社会、警察国家は戦争への道です。

共謀罪法案を4度、廃案に追い込むために、皆さん、語り合い、街頭にもでかけましょう。
(2017年5月15日)

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生活保護担当職員の「保護なめんな」ジャンパーに驚き

[弁護士 佐藤 真理]

神奈川県小田原市の生活保護業務を担当する生活支援課の歴代職員64人が「HOGONAMENNA(保護なめんな)」とローマ字でプリントしたジャンパーを自費で作成し、業務中に着用していたことが判明した。ジャンパーの胸には漢字の「悪」をデザインしたエンブレムがあり、背面には、「我々は正義だ」「不当な利益を得るために我々をだまそうとするならば、あえて言おうクズである」などと英語で書かれている。

2007年7月に窓口で職員3人が生活保護を打ち切られた男に切り付けられるという事件が発生し、それがきっかけで、「気分を高揚させ、連帯感を高めよう」と当時の職員が始めたようだと報じられている。

しかし、そういう事件がきっかけというなら、何故、保護打ち切りの対象者が激怒したのか、保護打ち切りを回避する道はなかったのか等の真摯な検討が必要だったのではないだろうか。生活支援課の職員らには、生活保護は憲法25条で保障された権利(生存権)であるとの意識が欠如していたのではあるまいか。

許しがたい事件であるが、背景には、国の方針に基づき生活保護受給者を削減しようとの「水際作戦」がある。市町村窓口では、保護申請を容易に受け付けようとしない傾向があり、保護開始まで時間がかかり苦労した経験が何度もある。

2014年9月、千葉県銚子市内の県営住宅で家賃滞納のため強制撤去となったその日、43歳の母親が無理心中を決意し、中学2年生の娘を殺害した事件がある。健康保険料も滞納するほどの生活苦で、母親は「家を失ったら生きていけない」と思い詰めた果ての事件であった。千葉県が家賃の減免措置をとらずに明け渡し請求訴訟、強制執行に及んだこと、市役所の窓口に二度も訪れた母親に「申請してもお金はおりない」などと述べて、生活保護の申請を勧めなかったこと等が判明した。母親は、刑事裁判で懲役7年の実刑判決を受け、今受刑中である。真に裁かれるべきは、憲法25条を踏みにじる、政府と行政の責任ではないだろうか。(新井新二外編『なぜ母親は娘を手にかけたのか(居住貧困と銚子市母子心中事件)』旬報社を参照ください)

第193国会が今月20日から始まり、安部首相は、施政方針演説で「かつて毎年1兆円ずつ増えていた社会保障費の伸びは、2016年度に続き、2017年度予算案でも5000億円以下に抑えることができた」と胸を張ったが、社会保障のさらなる連続改悪が狙われているのである。大企業の経常利益は、3年間で1・5倍近くに増え、大企業の内部留保は386兆円に達している一方、労働者の実質賃金は4年前に比べ年収が19万円も減り、家計消費は15か月連続でマイナスとなっている。働きながら生活保護基準以下の収入しかないワーキングプア世帯は、20年前の就業者世帯4・2%から同9・7%と2倍以上に増加するなど、貧困と格差が急速に広がっている。軍事費は5年連続で5兆円を越え、海外派兵型の装備を増強している。まさに、「大砲よりバターを」に逆行する予算と言わざるを得ない。

「米国第一」を宣言するトランプ米国新大統領のもとで、「日米同盟第一」を唱えて、さらに米国にすり寄ろうとする安倍政権は、最悪の組み合わせである。在日米軍基地のさらなる負担増ばかりか、戦争法発動により、米国の戦争に巻き込まれ、自衛隊員が「殺し殺される」事態に直面しつつあることが強く懸念される。

安倍政権を早期に退陣に追い込み、憲法が活かされ、「誰もが人間らしく生き、働ける社会」の実現を目指して、今年も頑張る決意である。
(2017年1月30日)

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南スーダンから自衛隊の即時撤退を求める

[弁護士 佐藤真理]

政府与党が、多数の国民の声を無視して、安保法制(戦争法)を数の力で成立させた「9・19」から1年以上経ちました。今年の9・19には、全国300か所以上で、戦争法廃止、立憲主義回復を求める集会・デモが行われ、近鉄奈良駅前でも600人集会が開かれ、私が主催者を代表して挨拶しました。

1992年のPKO法制定後、日本はPKO参加5原則<停戦合意の成立、受入れ同意、中立的立場の厳守、これらの要件が崩れた場合には部隊を撤収する、武器使用は生命の防護のための必要最小限に限る>のもとで、自衛隊の海外派遣に踏み切り、国連PKOに参加してきました。しかし、国連PKO自体、かつての停戦監視・兵力引き離しなどを中心とする活動から内容が大きく変化しており、南スーダンPKOを含め、国連安保理から武力の行使を容認されるのが通例となっています。

南スーダンでは、本年7月に大統領派と副大統領派の大規模な戦闘が発生し、市民数百人や中国のPKO隊員が死亡しています。アムネスティ・インタナショナルは、この7月の戦闘の際、政府軍が多数の住民を虐殺し、レイプや略奪を行ったとする報告書を公表。同報告書では、反政府勢力が国連の避難民保護施設に逃げ込み、避難民を「人間の盾」にしたこと、国連施設の真正面で5人の兵士にレイプされた女性の証言なども紹介し、国連PKOが住民を保護する責任を放棄したとして、「失望した」と述べています。10月8日には民間人を乗せたトラックが攻撃を受けて市民21人が死亡するなど、暴力や武力衝突が増加しており、南スーダンの現状は、もはやPKO5原則が崩れていることは明らかであり、速やかな自衛隊部隊の撤収が必要です。

にもかかわらず、政府は、違憲の「改正」PKO法に基づき、南スーダンの国連PKOに参加している陸上自衛隊に対し、「駆け付け警護」と「宿営地の共同防護」の新任務を付与する構えです。

しかし、自衛隊員に、「駆け付け警護」や「宿営地の共同防護」などの新たな任務を付与し、これらの任務遂行のための武器使用を認めるならば、憲法の禁じた「武力の行使」に発展し、「殺し殺される事態」<自衛隊員が政府軍や反政府軍の兵士を殺傷したり、自らも犠牲になる事態>を招くことは避けられません。

「改憲」を公言する安倍首相は、戦前のような「軍事大国」を目指す「妄想」にとりつかれているに違いありません。この道は「亡国」の道です。憲法9条のもと、非軍事平和主義=「世界の紛争に軍事的に関与せず、紛争の平和的解決に徹する」という戦後71年に及ぶ平和国家・民主国家という日本の原点の大転換を狙う、安倍政権の暴挙を絶対に許すわけにはいきません。

南スーダンから自衛隊は速やかに撤収し、憲法9条に基づいた民生支援の抜本的強化に尽力すべきです。
(2016年11月1日)

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共謀罪の導入を許してはならない

[弁護士 佐藤 真理]

犯罪行為がなくても、複数の人が話し合い合意しただけで犯罪とされる「共謀罪」法案が、再び国会に提出されようとしています。

共謀罪法案は、2003年以降、3度、国会に提出されましたが、広範な市民の反対の声により成立を阻止してきました。
ところが、安倍内閣は、2020年・東京オリンピックに備えての「テロ対策」との口実で、「組織的犯罪集団に係る実行準備行為を伴う犯罪遂行の計画罪」を新設しようとしていますが、その実質は共謀罪です。

刑法は、犯罪が実行され、結果が発生した場合に罰する「既遂」処罰が原則です。しかし、共謀罪は具体的な行為がなくても、犯罪について「話し合い合意した」(共謀)だけで処罰されます。これは危険な意思=「内心」を処罰するようなものです。

今度の法案では、適用対象を旧法案の「団体」から「組織的犯罪集団」に限定したといいますが、「組織的犯罪集団」との定義は不明確で、処罰対象が広く、捜査機関の判断に委ねられることに変わりはありません。共謀罪を適用する範囲も、「法定刑の長期が4年以上の懲役・禁固の罪等」であり、その犯罪数は600を超えます。テロのような重大犯罪に限らず、キセル乗車(詐欺罪)や万引き(窃盗)など、凶悪といえないような犯罪まで広く含まれます。労働組合員が居酒屋で、「社長は横暴過ぎる、殴ってやりたい」「そうだ、殴ってやろう」と会話しただけで犯罪とされかねません。

今年の通常国会で、電話や電子メール、SNSにいたるまで、警察が第三者の立ち会いなく監視できる「盗聴法大改悪」の法律が成立しました。これに共謀罪が加わると、テロ対策の名の下に、市民団体や労働組合内での会話が広く監視・盗聴され、市民社会のあり方が大きくかわることになります。

テロ対策を装う、市民弾圧法=「共謀罪」法案を断固、阻止しましょう。
(2016年9月13日)

カテゴリー: sato

安倍チャンネルを許さない-NHK放送受信料裁判を ご支援ください

[弁護士 佐藤 真理]

籾井勝人氏はNHK会長に就任した際の会見で、「政府が右を向けという時にNHKは左を向くことができない」と発言しました。以来、NHKの「安倍チャンネル化」(政府広報化)がいっそう進んでいます。

放送法には、テレビを購入すると、NHKとの間に、放送受信契約を結ばなけれならないと規定されています。この規定を根拠に、市民が、NHKの放送を受信するか否かにかかわらず、NHKは放送受信料を徴収しているのです。

Aさんは、約3年前からNHK放送受信料の支払いを中断していたことから、NHKは、昨年10月、34か月分の放送受信料4万3980円の支払請求訴訟を提起してきました。

裁判は奈良地裁で、本年3月4日から始まりました。私たち被告弁護団は、「放送受信契約は、受信の対価として受信料を支払うという継続的な『有償双務契約』である。市民は受信料を支払う義務があるが、他方、NHKは、放送法を遵守した放送を提供する義務を負っている。NHKが放送法第4条等が規定している「政治的に公平であること」、「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」などの義務を履行しない場合には、市民は、受信料の支払いを拒み、または一時留保することができると主張しています。

ところが、5月13日の第2回口頭弁論において、担当の森川裁判官が、突然予告もなく、「弁論終結」と宣言しました。
被告代理人の私が強く抗議し、「被告側はまだ主張立証を予定している。原告の主張への反論を準備している」と指摘して弁論の続行を求めましたが、森川裁判官は一言も発言せず、立ち上がったため、私は裁判官の忌避を申し立てました。被告のAさんを支援している「NHK問題を考える奈良の会」が提起した「森川裁判官の忌避を求める請願署名」が急速に広がり、5月24日までに合計1799筆が裁判所に提出されました。忌避申立てに関しては、現在も大阪高裁で審理中です。

私たちは、早期に弁論再開を勝ち取り、「安倍チャンネル化」しているNHKの報道の現状を告発し、その是正が図られない限り、放送受信料の支払いを一時留保できる権利の確立を求めて、全国的なたたかいを発展させていくつもりです。
ご支援をよろしくお願い致します。
2016年7月1日
佐藤真理

貴い命を奪うことなかれ

弁護士 佐 藤 真 理

先月中旬、長野県軽井沢町でスキーバスが崖下に転落した事故で、15人もの若者が死亡するという痛ましい事故が発生しました。
 規制緩和政策による運転手の過酷な労働環境が生んだ悲劇であり、規制緩和政策について、「人命尊重」の立場からの抜本的見直しが必要と痛感しています。

 奈良県を東西に走る「名阪国道」は、「1000日道路」とも言われ、70年の大阪万博に間に合わせるために、山を削って強引につくったため、急カーブ、急傾斜が多く、自動車専用道路にもかかわらず、最高速度は60キロと制限されるという、いわくつきの危険な道路です。長らく、全国の自動車専用道路10キロ当たりの死亡事故発生件数が「ワースト1」といわれ、幾多の悲惨な事故があり、現在でも毎年10件近くの死亡事故が発生しています。

 名阪国道を通るとき、私はいつも20年ほど前の悲しい事故を思い出します。深夜、20歳の青年の連転するトラックが乗用車に追突し、車が炎上して若い男女4人が亡くなりました。居眠り運転事故でしたが、弁護を担当した私は執行猶予を目指して努力しました。
 父親の急死のため青年が大学を休学し、運送会社に動め出して25日目の事故でした。13日間連続で働き、事故直前3日間の拘束時間は一日平均16時間38分に及び、睡眠は2時間27分という極度の睡眠不足状態でした。事故前日は午後9時半に帰宅し、わずか1時間50分後に居眠り状態となり暴走したのです。

 禁固2年の実刑判決となりましたが、私は今では実刑でよかったのかなと思い直しています。4人の命を奪ったという重荷を一生背負う青年にとって、刑に服したことは多少とも心の救いとなっているのではと思うからです。
 青年とお詫びに上がった時、「あなたはともかく生きているんだから・・・」と涙ぐまれたご遺族の姿を忘れることができません。
                                                                    (2月2日)

戦争法廃止の2000万署名を成功させよう

〔弁護士 佐藤真理〕

 9月19日未明、政府・与党が、参議院本会議で、戦争法案の採決を強行し「成立」させてから2か月が過ぎました。

 4か月余の国会審議の中で、戦争法案の違憲性は誰の目にも明らかとなりました。「恒久平和主義」を破壊し、「立憲主義」(憲法の枠内で行政を進めなければならない原則)を踏みにじるという点が違憲性のポイントであり、弁護士会の反対運動の根拠となりました。審議が進むほど、法案反対の声が高まり、少なくとも慎重審議を尽くすべきで一国会で採決すべき法案ではないとの意見が世論の大勢を占めました。この世論と空前の反対運動(8月30日には12万人が国会を包囲、全国1000カ所で集会・デモ・宣伝行動)を無視して、強行採決を繰り返した安倍政権のやり方は、民主主義、国民主権に背く、「独裁政治」であり、事実上のクーデターというべきものです。

 政府・与党は国民は「やがて忘れる」と高をくくっているのでしょうが、政府と法案を追い詰めた、たたかいは継続しています。憲法違反の法律は無効であり(憲法98条1項)、私たちは、戦争法の発動を許さず、戦争法の廃止を目指して運動を継続発展させていきます。

 驚いたことに、安倍政権は平然と憲法違反の前科を積み重ねています。

 10月21日、野党5党と無所属の衆議院議員、参議院議員84名が臨時国会の召集を要求したのに対し、政府は、首相の外交日程などを理由にこれを拒み、来年1月開催の通常国会を少し早めに召集するなどと逃げ回っています。しかし、憲法53条は「いずれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。」と定めており、内閣による招集拒否が憲法違反であることは明白です。

 このような政府の態度は、憲法学者および世論の多数が違憲と判断した戦争法案を強行採決した憲法無視の姿勢と共通するものです。憲法の明文を公然と無視・否定するもので、立憲主義の危機を一層深めるものであり、断じて容認できません。

 昨日(11月25日)、最高裁判所は、「1票の格差」が最大2・13倍だった昨年12月の衆議院選挙は「違憲状態」であったとの判決を出しました。「違憲状態」との最高裁判決は、2009年衆議院選挙以来、3回連続のものです。そもそも、「違憲状態」の選挙で選出された国会議員に「違憲立法」を「成立」させる資格などはありません。

 「違憲」の上に「違憲」を重ねる安倍内閣の暴走にストップをかけられるのは、主権者国民の運動が第一です。安倍内閣を早期退陣に追い込むために、戦争法廃止の「2000万人署名」を5月3日の憲法記念日までに積み上げるという壮大な運動に取り組みましょう。

 戦争法廃止のために、成立した戦争法制の内容をさらに深く学ぶことが重要です。自由法曹団奈良支部は引き続き、学習会への講師派遣活動を継続しています。気楽にお申し込み下さい。
                               
11月26日
佐藤真理

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8・22市民集会・パレードに集まろう

〔弁護士 佐藤真理〕

 国会審議が進む中で、安保法制関連法案が「戦争法案である」との認識が広まり、どの世論調査でも、8割以上の国民が「政府の説明は不十分で、納得できない」、6割の国民が「今国会での成立には反対」との意思を示しています。

 本法案は、憲法違反であり、大多数の憲法学者が「違憲」と断定しています。なによりも、強制加入団体である全国52の弁護士会がこぞって廃案を求める運動に取り組んでいます。憲法の「恒久平和主義」を破壊し、「立憲主義」(国民の権利を守るために権力者の手を縛るのが憲法の役割であり、政府は憲法の枠内でしか権力を行使できない)を否定する内容であることが主な反対理由です。

 ところが、安倍首相が6月15日、「国民の理解は進んでいない」と言明しながら、同日、衆議院特別委員会で採決が強行されました。多数の国民の意思を踏みにじり、「数の力」で押し切るのは、民主主義ではありません。安倍内閣のやり方は、もはや国民主権を踏みにじる「独裁」的手法と批判せざるを得ません。強行採決後、学生や学者の共同行動が広がるなど、本法案への国民の反対世論は益々広がりつつあります。
               ※

 安倍首相側近の磯崎首相補佐官が、「考えないといけないのは、我が国を守るため必要な措置かどうかで、法的安定性は関係ない」と講演で発言しました。政府の集団的自衛権の行使容認は従来の憲法解釈の枠内であり、法的安定性を損なうものではないとの安倍内閣の説明が「虚偽」であり、「ごまかし」であることを露呈したのです。

 安倍首相自身の「国際情勢に目をつぶって、(国民を守る)責任を放棄して従来の(憲法)解釈に固執するのは、政治家としての責任の放棄だ」との発言、また中谷元防衛大臣の「現在の憲法をいかにこの法案に適用させていけば良いのかという議論を踏まえて、(本法案の)閣議決定をおこなった。」との発言など、安倍政権の閣僚や主要メンバーは、立憲主義や「法の支配」についての基本的理解を欠いているのです。
               ※

 8月15日、終戦から70年を迎えました。15年戦争で、2000万人のアジア諸国民の犠牲を生み、日本国民は310万人が犠牲となりました。

 日本国内で、ヒロシマ、ナガサキの原爆被害、東京・大阪など各地の大空襲、沖縄戦などで70万人が亡くなりました。

 アジア各地での日本軍人の戦没者は240万人に達していますが、その半数以上が餓死者だったのです(藤原彰『餓死した英霊たち』)。しかも、240万人の遺骨の内、収容できたのは、127万人に過ぎず、約113万人の遺骨がいまだに放置されたままなのです(「毎日」8月14日)。まだ戦後は、全く終わっていません。

 「自爆テロ」の先駆ともいえる戦争末期の「特攻作戦」で6000人近い若者が犠牲となりました。国のため、天皇のため、若者の命が「鴻毛(こうもう)」(鳥の羽)のように扱われたのが先の戦争だったのです。
               ※

 戦後70年は、改憲(日米支配層)と護憲・活憲(民衆)の「せめぎあい」の歴史です。

 今、安倍政権は、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないように」との不戦の誓い(憲法前文)を忘れ、日本を、再び「戦争する国」、いつでも、どこでも、切れ目なく、米国とともに海外で戦争できる国に変えようとしています。

 今こそ、主権者が声を上げるときです。

 残暑が続きますが、8月22日(今週土曜日)午後3時に県庁南側の奈良公園にお集まり下さい。奈良弁護士会が初めて、大規模な屋外集会とパレードを行います。2500人規模という空前の集会です。是非とも、友人や家族連れで、またお一人でも、ご参加下さい。

 本法案を廃案に追い込めれば、安倍内閣を倒せるだけではありません。必ず日本が変わる大きな転機になると確信します。
 
 「徴兵制 いのちかけてもはばむべし 母、祖母、女(おみな)牢に満つるとも」
                              (八坂スミ)
(2015年8月18日記)

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戦争立法阻止のために全力で闘う

〔弁護士 佐藤真理〕

 安倍内閣は、5月15日、安保法制関連法案を国会に提出しました。6月24日までの国会会期を大幅に延長して、本国会中に、可決成立させることを狙っています。

 私は、弁護士になった1979年以降、数々の悪法阻止運動に取り組んできましたが、本法案は、間違いなく、戦後最悪の戦争法案です。

 侵略戦争に対する痛苦の反省から、不戦を誓った恒久平和主義の憲法9条を破壊して、いつでも、どこでも、自衛隊派兵ができ、切れ目なく、米国の戦争を支援できる軍事大国を目指すものだからです。

 本日、戦争法案は衆議院本会議で審議入りします。明日、私は上京し、日弁連憲法対策本部の皆さんと一緒に、国会議員に対し、憲法違反の本法案に反対するよう申し入れる要請行動に参加します。

是非とも、本法案の危険な内容を知るための学習会を企画して下さい。講師派遣要請には、自由法曹団奈良支部の全員が交代で対応します。私も万難を排して、講師を務めます。

 街頭宣伝、デモ・パレード、議員要請等、あらゆる運動を展開し、必ず戦争立法を阻止しましょう。全力を挙げて奮闘することを誓います。
(2015年5月26日)

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政府のNHKではなく、視聴者・市民のNHKへ

〔弁護士 佐藤真理〕

「NHK問題を考える奈良の会」の発足
 「NHK問題を考える奈良の会」が発足し、請われて代表に就任しました。今月10日開催の発足の集いには、寒さの中、100名を超える参加者があり、元NHK大阪報道部記者だった小山帥人氏が「政府のNHKではなく、視聴者・市民のNHKへ」と題して記念講演をされました。

NHKの戦争協力と戦後の放送法体制
 NHKは1926年(昭和元年)に発足しましたが、1942年2月、情報局(内閣直属の情報機関)は「戦争下の国内放送の基本方針」を定め、「宣戦の大詔に基き皇国の理想を宣揚し国是を闡明(せんめい)する国民の挙国的決意を鞏固ならしむ」との基本方針のもと、「放送の全機能を挙げて大東亜戦争完遂を驀進(ばくしん)す」との目的のため、戦争遂行機関とされました。
 戦後、放送法体制のもと、番組編成基準として、「政治的に公平であること」、「報道は事実をまげないですること」、「意見が対立している問題については、できるだけ多くの観点から論点を明らかにすること」などが謳われることになったのは、戦中の反省によるものです。

政府追随の籾井会長発言
ところが、昨年1月にNHK会長に就任した籾井勝人氏は、就任会見で「政府が右というものを左というわけにはいかない」と発言して、大変な批判を浴びましたが、最近でも、従軍慰安婦問題について「政府の正式なスタンスというのが見えないので、放送するのが妥当かどうかは慎重に考えないといけない」などと発言しています。政府や権力の監視機関というメディアの本質についての認識が全くなく、公共放送は政府の広報機関であるのが当然との認識に立つ籾井氏には、即刻辞任してもらうしかありません。 小山氏は、講演の中で、市民からNHKへのアクセスの強化(抗議・批判と激励)と会長公選制などの制度改革を求める運動の重要性を強調されました。

戦争法制と9条改憲を目指す安倍内閣の暴走
 安倍内閣は、昨年7月1日の閣議決定で、長年、憲法上許されないとしてきた集団的自衛権の行使容認に踏み切り、今通常国会で(6月24日までの会期を延長してでも)、同閣議決定を具体化する十数本の安保法制(軍事法制)を数の力で一気に可決成立させることを狙っています。万一、それを許すと、日本は、外国からの武力攻撃を受けていないにもかかわらず、アメリカの戦争に参戦し、日本の自衛隊員が他国兵士を「殺し、殺される」事態を招くことになります。非軍事・非暴力の憲法9条は死文化し、近い将来に、9条の明文改悪を実現しようとしているのです。

敗戦直後の朝日新聞社説「自らを罰するの弁」
 太平洋戦争中、戦果を報じる大本営発表は846回ありましたが、ラジオはこれを垂れ流し、新聞は大政翼賛会の発表のままに戦争賛美の論説を書き続けて、国民に多大の犠牲を強いる先導役を果たしました。日本のメディアと言論人の多くは、戦前・戦中に侵略戦争の片棒をかつぐ政府広報機関の役割を担わされたことに痛切な反省をしています。たとえば、朝日新聞は、1945年8月23日に、「自らを罰するの弁」を社説に掲げ、「言論機関の責任は極めて重い。『己れを罰する』の覚悟は十分に決めている。」と反省の弁を述べています。戦後のメディアと言論人は、2度と同じ過ちを犯さず、権力監視と民主主義の前進のために尽力することを誓って再出発したのです。

マスコミ各社幹部と安倍首相のたび重なる会食
 ところが、今のマスコミは、権力監視の役割を忘れ、政府の広報機関に堕しつつあるのではないでしょうか。特定秘密保護法の問題、集団的自衛権の問題など、広範な国民の反対運動の中でも、サンケイや読売は「推進」の論陣を張り、朝日と毎日は「反対」と二分化が鮮明です。
 ところが、その朝日、毎日を含め、マスコミ各社の社長、政治部長、編集部長ら幹部が、安倍首相と高級料理店での会食を重ねているのです。高級料亭で、2時間も3時間も接待を受け、何を話し合っているのでしょうか。

マスコミの活動監視のための粘り強い運動を
 マスコミを政府の広報機関から、主権者国民の権利擁護の機関に変えていくために、マスコミを監視していく運動を粘り強く、続けていくことが重要だと思います。安倍内閣の施策への提灯報道を批判し、抗議していく運動と共に、籾井会長が辞任しない限り、受信料の支払いを止める運動、首相とマスコミ幹部の会食を批判し続ける運動など多種多様な取り組みが大事です。同時に、すぐれた報道には、大いに評価し、激励していくことが重要で、報道関係者と市民との連携を追求していくことが必要と思います。

(2015年3月12日)

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慰安婦問題

〔弁護士佐藤真理〕

「河野談話」攻撃と「朝日」バッシング
 朝日新聞が、8月初め、「韓国済州島で慰安婦を強制連行した」とする「吉田証言」は虚偽だったとして「記事の取消」を公表したことを契機に、「『河野談話』における慰安婦が強制連行されたとの主張の根幹がくずれた。『河野談話』を取り消して、ぬれぎぬを晴らすべきだ」との「河野談話」攻撃と朝日新聞へのバッシングが吹き荒れています。

政府による調査と「河野談話」
 日本政府は、91年12月から慰安婦問題の調査を進め、93年8月、河野洋平内閣官房長官が調査結果を発表し、次のような談話(「河野談話」)を表明しました。
 「今時調査の結果、長期に、かつ広範な地域にわたって慰安所が設置され、数多くの慰安婦が存在したことが認められた。慰安所は、当時の軍当局の要請により設置されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれにあたったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。また、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった。・・本件は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である。政府は、この機会に、改めて、・・いわゆる従軍慰安婦として数多(あまた)の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる。・・われわれはこのような歴史の真実を回避することなく、むしろこれを歴史の教訓として直視していきたい。われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する。」
 
「河野談話」否定派は歴史の偽造を企図している
 「河野談話」を否定しようとする人々の主張は、歴史を偽造するものです。
 第1に、「河野談話」は、吉田証言を調査対象に加えていたものの、信用性に欠けるとして、そもそも吉田証言を全く根拠にしていません。
 第2に、「河野談話」否定派は、慰安婦問題を「強制連行の有無」に矮小化しています。米国下院をはじめとする7つの国・地域の議会から日本政府に対する抗議や勧告の決議があげられていますが、問題にしているのは、強制連行の有無ではなく、軍(政府)による「慰安所」における強制使役=性奴隷制度こそが、きびしく批判されている問題の核心なのです。
 「河野談話」にあるように、「甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあった」のであり、更に、人さらいのような「強制連行」もあったことは、インドネシアのスマランや中国南部の桂林での事件などでも明らかになっています。
 1991年以降、元慰安婦が日本政府を被告にして補償請求の訴訟を提起しました。8つの裁判で、35人の被害者全員が慰安婦とされた過程が「その意思に反していた」と強制性があったことが認定され、元慰安婦の人々の証言などにより、すさまじい人権侵害の実態が明らかにされたのです。

人種差別撤廃委員会の日本政府への勧告
 本年8月、国連の人種差別撤廃委員会は、日本政府に対して、慰安婦問題について、被害者への調査と謝罪を求めるとともに、ヘイトスピーチ(異なる人種等に対する差別をあおる憎悪表現)に毅然と対処し、法律で規制するよう勧告する最終見解を公表しました。

歴史の真実を直視しよう
 本屋で、中国や韓国を誹謗中傷する本が山積みされており、各地で、在日韓国・朝鮮人に対するヘイトスピーチが横行しています。このような排外主義の風潮には背筋が寒くなります。
 侵略戦争と植民地支配の歴史を直視して反省し、2度と戦争を行わないとの不戦の誓いのもとに、なによりもアジアの国々との平和と友好を築いていくことが、戦後日本の出発点だったはずです。
 15年戦争は、侵略戦争ではなく、アジア解放の正義の戦争だった、南京大虐殺も、従軍慰安婦も存在しなかった、などと歴史を偽造し、ナショナリズムを煽る、歴史修正主義は、再び戦争に向かう亡国の道ではないでしょうか。
  ドイツのヴァイツゼッカー元大統領の終戦40周年記念演説の1節を紹介します。
「罪の有無、老幼いずれを問わず、われわれ全員が過去を引き受けねばなりません。だれもが過去からの帰結に関わり合っており、過去に対する責任を負わされております。
・・問題は過去を克服することではありません。さようなことができるわけはありません。後になって過去を変えたり、起こらなかったことにするわけにはまいりません。しかし、過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目となります。非人間的な行為を心に刻もうとしない者は、またそうした危険に陥りやすいのです。」
                                            (2014年10月25日)

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戦争と両親のこと

[弁護士 佐藤真理]

母の死去から3年6か月余。ふっと母のことを思い出し、いいしれぬ寂しさを覚えることがある。
昨年12月に卒寿を迎え、九州大分で一人暮らしをしている父のことが心配でならない。つい2、3年前までは、毎朝、散歩を欠かさなかったのに、膝が急速に悪化し、外での散歩は無理となった。今年の2月頃、転んで肋骨を骨折し、2ヶ月間、コルセットを着用していた。これを機に、介護保険等級が上がり、ヘルパーさんの訪問回数が増えたのはありがたい。
膝、足以外は、ほとんど体に問題なく、公民館での囲碁に週2回通っている。外での散歩は無理だが、今も、毎日、杖をつきながら、廊下の散歩(3000歩)を続けている。この頑張りには敬服する。
妹と交代で帰省するが、その回数が少しずつ増えている。栄養価の高い食事を一緒にし、映画のDVDを持ち帰り、一緒に見ている。孫たちの成長が楽しみのようである。いつまで親孝行ができるだろうか。

まもなく終戦の日を迎えるが、母からは、1945年7月16日夜半から17日未明にかけての大分空襲で焼夷弾により家を焼失し、逃げまどったという話を何度か聞いた(当時、母は20歳だった)。遠い縁戚を頼って借家住まいをした家主の息子が父で、後年、結婚することになった。
大分空襲の頃、父は、兵役で仙台におり、米軍が上陸してきたら、戦車に爆弾を抱えて体当たりするための「たこつぼ」堀りをさせられていたという。終戦時に父は21歳だったが、特攻戦死者の内20歳以下の者が陸軍23・5%、海軍43%を占めていたといわれる。
多くの若者の命と未来を奪ったとんでもない時代であった。戦前を美化し、戦争する国を目指す安倍内閣を早期退陣に追い込むために頑張りたい。
(2014年8月11日)

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安倍内閣「打倒」を掲げて街頭に出よう

[弁護士 佐藤真理]

 半世紀以上にわたり、集団的自衛権の行使は「憲法上許されない」としてきた政府が、これからは「憲法上許され、行使できる」と閣議決定による解釈改憲を7月1日にも強行しようとしています。しかも、「解釈の整理、一部変更」であって、「解釈改憲」ではないなどと強弁しています。朝日新聞社説(6月28日)が「集団的自衛権 ごまかしが過ぎる」と批判しているのも当然です。

 5月15日、安倍首相の私的諮問機関に過ぎない「安保法制懇」が提出した報告書では、集団的自衛権の全面解禁を打ち出し、多国籍軍参加に道を開く国連の集団安全保障措置に参加しての武力行使にも憲法9条の制約はないなどと提言しました。
 安倍首相は当初、この提言を丸のみするのでなく、「自衛隊が武力行使を目的として湾岸戦争やイラク戦争のような戦闘には参加しない」、集団的自衛権の限定的行使を「検討・研究」するなどと述べていました。

 自民・公明の密室での与党協議の中で、集団的自衛権の行使容認が合意されました。日本に対する武力攻撃がなくても、「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある時には、集団的自衛権の行使を認めるというのです。「明白な危険」は、「政府がすべての情報を総合して判断する」ということですから、政府の裁量でいくらでも行使の範囲が拡大され、限定・歯止めはありません。その上、「すべての情報」は、特定秘密とされ、国会も国民も知ることができないでしょう。

 かつて、国民は、目・耳・口をふさがれて、アジアへの侵略戦争を「アジア解放の聖戦」などと欺かれて、無謀な侵略戦争に駆り出され、多大の犠牲をうんだ悪夢が想起されなす。「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないように決意した」憲法が壊されるという重大な事態に直面しています。

 閣議決定には、集団的安全保障での武力行使は記載されないようですが、政府が国会質疑用にまとめた「想定問答集」では、多国籍軍参加に道を開く集団安全保障による武力行使も、「憲法上、許容される」場合があると明記しています。安倍首相らがめざすのは、再び「戦争する国」、軍事大国への道です。
 憲法解釈を180度ひっくりかえして「海外で戦争する国」への大転換を、国会のまともな審議もなく、与党だけの密室協議で一内閣の閣議決定で強行するのは、憲法破壊のクーデターというべき暴挙です。

 主権者国民が今こそ、行動に立ち上がる時でしょう。街頭に出ましょう。
 7月2日午後6時半、近鉄奈良駅前広場に集まりましょう。「戦争する国づくり反対! 安倍内閣打倒! 7・2奈良県民集会」です。空前の大集会にして、安倍内閣打倒・改憲阻止の大運動の第1歩を踏み出しましょう。

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集団的自衛権行使容認の解釈改憲は9条「壊憲」である

[ 弁護士 佐藤真理]

 安倍内閣は、昨年暮れの「秘密保護法」の制定に続き、今、「解釈改憲」の手法により「集団的自衛権の行使」容認に踏み出そうとしています。
 しかし、集団的自衛権の行使が違憲であることは、長年にわたり自民党政権でさえ認めてきたことです。

<自衛権発動の3要件>
 憲法9条を素直に読めば、自衛隊は9条2項の「陸海空軍その他の戦力」に該当し、違憲の存在です。これに対して、従来、自民党政府は、憲法9条は、国家固有の自衛権を否定していないとして、他国からの武力攻撃に対して、国民の生命・財産を守るために、国家固有の自衛権に基づいて、武力攻撃を排除するために必要最小限度の実力を行使することは否定されないとして、そのための実力組織(自衛隊)を保有しても、9条2項の戦力には該当せず、自衛隊は合憲である、と説明してきました。その代わり、専守防衛であり、①わが国に対する急迫不正の侵害があること、②これを排除するために他の適当な手段がないこと、③必要最小限度の実力行使にとどまることの3つが、自衛権発動の3要件とされてきました。
 集団的自衛権は、「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」と定義されますが、日本が攻撃されていない以上、上記の①、即ち自衛権発動の第一要件を満たさず、憲法9条のもとでは集団的自衛権の行使はできないと、自衛隊創設以来、60年間にわたって、政府は答弁してきたのです。

<解釈改憲は立憲主義・法治主義に反する>
 ところが、安倍首相は、国会審議において「(集団的自衛権行使は)政府が新しい解釈を明らかにすることによって可能」、「(政府答弁の)最高の責任者は私。その上で、選挙で国民の審判を受ける」などと答弁をし、今国会中にも、集団的自衛権の行使容認の閣議決定に踏み出そうとしています。
 集団的自衛権の行使容認の解釈改憲の動きに対して、今、各界各層から批判の声が広がっています。例えば、元内閣法制局長官の阪田雅俊氏は、「政府による憲法解釈の変更で集団的自衛権の行使が認められるならば、戦争放棄などを記した憲法9条の意味がなくなる。憲法改正は国民投票が必要だが、政府による憲法解釈の変更では国民の出番もない」「憲法だけ明文改正なしに解釈でやれるなら立法府もいらない、法律も解釈で運用すればいいことになり、立憲主義、法治主義の大原則に反する」と厳しく批判しています。
 憲法は国民の権利を保障するために、権力者を縛るものです(立憲主義)が、恒久平和主義を定める憲法は、国民が政府に対して、「戦争をしてはならない。」「軍隊を持ってはならない。」と命じているのです。解釈改憲はこの立憲主義を踏みにじるものです。 法律の改正は、国会の両議院における議決が必要ですが、法律より上位の憲法を憲法96条の改憲手続(衆参両院における3分の2以上の賛成での発議と国民投票での過半数の賛成を要する)に基づかずに、一内閣の判断だけで憲法解釈を変更するというのは、法治主義に反する暴挙と言わざるを得ません。

<限定論はまやかし>
  今、政府や自民党からは、限定容認論ということが盛んに持ち出されています。集団的自衛権の全面容認でなく、「我が国と密接な関係がある国に対して、ある国が攻撃、占領しようとしており、放置すれば日本も侵攻されることが明白な場合」などに限定して集団的自衛権の行使を認めようというのです。
 しかし、どういう場合に「放置すれば日本も侵攻されることが明白」といえるのかは、すべて政府の判断次第であり、容易に拡大していくことになります。「限定」はまやかしです。
 戦力の不保持(正規の軍隊の不保持)、交戦権の否認、集団的自衛権の不行使などは、平和国家としての日本のブランド力を支えてきたものです。今、「憲法9条にノーベル平和賞を」という運動がひろがるなど、憲法9条は世界の宝です。

<今が正念場 学習運動を広げよう>
 これからの1年、とりわけ年内は、解釈による集団的自衛権の行使容認など、「戦争する国」を目指す改憲勢力と、平和憲法を守り、活かす改憲阻止運動の「せめぎ合い」の正念場です。
 限定ならいいのではないか、などと安易に騙されないように、改憲勢力の狙いとこれに対抗する現憲法の意義を繰り返し、深く学習し、広げていきましょう。
 当事務所では、憲法問題の学習会講師をいつでも派遣します。気楽にお申し出下さい。

以上

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解釈改憲は「壊憲」そのもの

[弁護士 佐藤真理]

 安倍内閣は、昨年暮れの臨時国会での「秘密保護法」の制定に続き、集団的自衛権の行使容認に踏み切ろうとしています。
 しかし、集団的自衛権の行使が「違憲」であることは、長年にわたり自民党政権でさえ取ってきた憲法解釈です。軍隊の保持を禁じた憲法9条のもとでも、自衛のための必要最小限度の実力の保有は許されるとして、自衛隊は「合憲」、但し、「専守防衛」、専ら外国からの攻撃に対する防衛力であり、海外派兵は許されないし、集団的自衛権の行使も許されないとしてきたのです。

 ところが、安倍内閣は、アメリカの目下の同盟者として「海外で戦争する国」造りを目指して、暴走しています。
 安倍首相は、国会審議において「(集団的自衛権行使は)政府が新しい解釈を明らかにすることによって可能」(2月5日)、「(政府答弁の)最高の責任者は私。その上で、選挙で国民の審判を受ける」(2月12日)などと強弁しています。
 一度や二度の選挙で勝利した政党の内閣や首相に憲法解釈を変更する権限は全くありません。そもそも、閣僚や国会議員には憲法を尊重し擁護する義務があります(憲法99条)。憲法は、国民の基本的人権を保障するために権力および権力者を縛るためにあるのです。これを「立憲主義」といいますが、安倍首相は憲法の根本原理である立憲主義を破壊しようとしているのです。

 阪田雅裕元内閣法制局長官は、「政府による憲法解釈の変更で集団的自衛権の行使が認められるならば、戦争放棄などを記した憲法9条の意味がなくなる。憲法改正は国民投票が必要だが、政府による憲法解釈の変更では国民の出番もない」「憲法だけ明文改正なしに解釈でやれるなら立法府もいらない、法律も解釈で運用すればいいことになり、立憲主義、法治主義の大原則に反する」と批判していますが、正鵠を射た指摘です。

 安倍首相は安全保障問題に関する有識者懇談会の報告を受けて、4月にも集団的自衛権行使容認の「閣議決定」を行おうとしています。引き続き、「国家安全保障基本法案」を提出して立法改憲をねらっています。
 万一、国家安全保障基本法の成立を許すようなことになれば、事実上、憲法9条は空文化され、「戦争する国」、国民の権利・自由を奪う「強権支配の国」、「歴史と固有の文化を持ち、天皇を戴く国家」(自民党憲法改正草案)への暴走=「歴史の逆行」を押しとどめることが著しく困難な事態をまねくことは必定です。
 この国の主権者=主人公である私たち一人一人の行動が必要でしょう。憲法12条は「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。」と謳っています。国民の不断の努力によって、「戦争する国造り」を許さないため行動することが今、求められていると思います。

 事務所からの案内にありますが、3月11日に、奈良弁護士会は半田滋氏(東京新聞論説委員)の講演会を県立文化会館で開催します。秘密保護法と集団的自衛権問題をわかりやすく語れるジャーナリストとしては第一人者です。是非ともご参加下さい。

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活かそう!守ろう!日本国憲法(6)-主権者として行動に立ち上がろう

[弁護士 佐藤真理]

 自民党改憲草案では、国防軍の創設を打ち出し、国防軍の機密に関する事項を法律で定めるとして、秘密保護法制を憲法に位置づけることが狙われています。
 その先取りとして、秘密保護法案が先の国会に登場しました。集団的自衛権の行使容認に踏み切り、米国とともに、海外で「戦争する国」を目指す安倍内閣は、米軍との「軍事情報の共有」と主権者国民への「情報隠し」を意図して、空前の反対世論を無視して、強行採決を繰り返し、12月6日、同法を成立させました。

 法律家団体、報道関係機関、学者・文化人、作家、映画・演劇関係者をはじめ、各界各層の広範な人々が反対行動に立ち上がりました。政府与党は、「人のうわさも75日」と高をくくっているようですが、成立後も、反対運動はひろがっています。秘密保護法の発動を許さず、廃止を目指す運動に是非ともご協力ください。

 2014年の通常国会に必ず出てくるのが、「国家安全保障基本法案」です。集団的自衛権の行使を公然と認め、国の安全保障施策に対する国民の協力義務、武器輸出3原則の放棄などが狙われています。仮に本法案の成立を許すようなことになれば、憲法9条の「死文化」は避けられません。「戦争する国」、「強権支配の国」、「天皇を戴く国」への暴走を阻止することが著しく困難となります。

 日本は今、秘密保護法、国家安全保障基本法など、「戦争する国」づくりを目指す「壊憲」安倍内閣の暴走=「時代の逆行」を許すのか、憲法が光り輝く「新しい日本」実現への第一歩を踏み出すのか、その岐路に立たされています。
 主権者である私たち一人ひとりが、憲法を護り、活かすための行動に立ち上がることが求められている時ではないでしょうか。

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活かそう!守ろう!日本国憲法(5)-福祉国家の解体を許してはならない

[弁護士 佐藤真理]

<国と地方の「役割分担」のねらい> 
 自民党草案は、「国及び地方公共団体は、法律の定める役割分担を踏まえ、協力しなければならない。」と規定しています。「役割分担」の名目で、国の役割を外交・防衛・通貨・司法などに特化し、国が行うべき福祉・安全等の行政を地方自治体に責任転嫁する根拠としようとしているのです。
 地方自治を支える財政は、自民党草案では、自主財源を原則とし、国の措置は例外的なものとなっています。地方自治体間の財政力格差についての国の責任は放置され、地方自治体には自助努力・自己責任が押し付けられ、財政危機に陥った地方自治体は他の有力な地方自治体との合併を強いられるでしょう。

<「財政の健全性」を口実に社会保障の大削減>
 「財政の健全性は、法律の定めるところにより、確保されなければならない。」との財政の健全性条項の導入や、「住民は地方自治体の役務の提供を等しく受ける権利を有し、その負担を公平に分担する義務を負う。」との受益者負担原則が提案されています。
 消費税率の10%からのさらなる引き上げや、医療や社会保障予算の大削減が待ち受けているのです。

<福祉国家の危機>
 現行憲法25条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と規定して、国民の生存権を保障し、国に社会福祉・社会保障の義務を課す「福祉国家」を標榜しています。
 自民党草案のもとでは、生存権の保障は実質的に骨抜きになり、ナショナルミニマム(政府が国民に対して保障する生活の最低水準)が失われ、「福祉国家」が危機に直面する事態となります。

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活かそう!守ろう!日本国憲法(4)-国民に服従を強いる天皇制へ

[弁護士 佐藤真理]

<天皇の君主化と弱まる国民主権>
 憲法は、「主権在民」を謳い、天皇は、国および国民統合の「象徴」であって、その地位は主権者である「日本国民の総意に基づく」とされています。
 ところが、自民党改憲草案は、「日本国は…天皇を戴く国家であって」と天皇を国民の上に君臨する存在と規定し、「天皇は、日本国の元首であり」として、国家を代表する権能を与えようとしています。
 天皇は「国政に関する権能」を持たず、主として形式的・儀礼的な「国事行為」のみを、「内閣の助言と承認」のもとに行うとされていますが、自民党草案では、国事行為について必要なのは、「助言と承認」でなく、「進言」(目上の者に対して意見を申し述べること)とされており、内閣の意向に反しても国事行為が可能とされかねません。現在、天皇は、憲法に定める「国事行為」以外にも、国民的行事への参加、被災地訪問、外国への公式訪問など、多くの「公的行為」を行っています。自民党草案は「公的行為」を正面から認めようとしており、何ら限定がありません。しかも、公的行為には内閣の「進言」による歯止めすら規定がありません。
 現行憲法では天皇・摂政は憲法尊重擁護義務(99条)を負うが、憲法制定権者である国民はこれを負わないと定められています。ところが、自民党草案では、逆に国民が憲法尊重義務を負い、天皇・摂政は憲法尊重擁護義務を外されています。天皇が国民の上に君臨する存在である以上、天皇は憲法に縛られず、国民が憲法に縛られることになるという発想です。

< 日の丸・君が代の強制>
 自民党草案は、「日の丸・君が代」を憲法に規定し、国民に、「尊重義務」を課そうとしています。日の丸・君が代の強制は思想・良心の自由の侵害であり、当然違憲です。ところが、教育現場での強制に関し、最高裁は、卒業式などでの不起立等の公立学校教職員に対する懲戒処分について、思想良心の自由の間接的制約に過ぎないとして「合憲判決」を出し、「戒告」処分は合理的裁量権の範囲内で「合法」とし、他方「減給」・「停職」は裁量権の範囲を超えて「違法」としました。自民党草案の下では、憲法自身が認める例外として、国民への広範な強制が強く懸念されます。

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いじめ自殺の根絶を願って

[弁護士 佐藤真理]

1 経過の概要
 本年3月28日、橿原市立中学校一年女子生徒が、マンション7階から飛び降り自殺するという痛ましい事件が発生しました。
被害生徒は、家族には、学校での「いじめ」について全く話していなかったのですが、次第にいじめの事実が親の耳に入り、4月25日、遺族は、学校に対し、いじめに関する調査及び無記名アンケートの実施を依頼しましたが、学校の対応は遅く、生徒に対する無記名アンケートが実施されたのは、事件発生から50日後の5月17日でした。氏名等をマスキングの上、パソコン入力したアンケートの写しが遺族側に開示されたのは、アンケート実施から66日後の7月22日でした。
 5月24日以降、遺族は、第三者調査委員会の設置を再三要請し、大津市が同市中二いじめ自殺事件に関して設置したものと同様に、市長部局下に第三者調査委員会を設置し、調査委員の半数は遺族推薦者から選任するよう求めました。
 6月6日、記者会見において、橿原市教委の教育長は「アンケートにはいじめを疑わせる回答があった。」と述べながら、「自殺については、いじめが原因である可能性は低い」と言い放ちました。当時、学校や市教委は、自殺の背景に家庭問題があるとのうわさに飛びつき、「いじめ隠し」に躍起となっていたのです。
 6月24日、遺族ら代理人(3人、7月24日以降は5人)が、第三者調査委員会の設置とアンケート結果の開示を要求する申し入れ書を送付しました。
 7月3日、橿原市長、市教委は、市教委の判断で既に「調査委員会」を設置し、第1回会合を7月10日に行うと回答してきました。
 遺族側の抗議を無視して、同月10日に「調査委員会」の第1回会合の開催が強行されましたが、驚いたことに4人の調査委員の中に、6月末まで橿原市の顧問弁護士を5年間務めていたK弁護士が含まれていたのです。
遺族側と市、市教委、校長とは、厳しい交渉(書面中心)を重ね、7月24日 遺族ら代理人は、K弁護士宛に(懲戒請求辞さずの決意の下)内容証明郵便を送付して調査委員の辞任を要求したところ、7月29日、K弁護士は、調査委員を辞任し、「遺族の抗議によるものと受け止めて頂いて結構です。」と表明しました。
 顧問弁護士の委員選任は、「遺族の理解を得ることが困難」とする県教委の意向も無視して市長が独断したようで、文部科学大臣からも厳しく批判されました。
 市、市教委は、K弁護士に代わる弁護士委員の補充のために、日弁連に調査委員推薦の依頼書を送付しましたが、遺族側は、調査については「できる限り遺族と合意しておくことが重要」との文部科学省初等中等局長の2011年6月1日付け通知に反して、遺族の意向を全く無視して設置した調査委員会自体の解散を主張しました。その上で、県教委の仲介のもとに、公正・中立な第三者調査委員会の設置に向けて、遺族ら(代理人弁護士を含む)、橿原市長部局および市教委の三者協議会の開催を提唱しました。
 8月16日、遺族ら代理人が、「アンケートの集計結果」(※)および被害生徒母親の「手記」をマスコミに公表したことが転機になったと思われますが、県教委の仲介の下、市教委(教育長ら)、市長部局(総務部長ら)と遺族側の三者協議会が、8月26日に初めて開催されました。市教育長から、この間の経緯について、遺族側に陳謝がなされ、「自殺については、いじめが原因である可能性は低い」との6月6日の発言は、「不適切であった」として「撤回する」との表明がなされました。

※ 2、3年生を対象とするアンケートで、被害生徒の異変につき、自身が見たか、被害生徒から聞いたと答えた(直接の見聞)回答が58人からあり、内40人は学校内のできごとについて答え(クラス内で仲間はずれにされていた、クラブの先輩に暴力をふるわれていたとの回答が多数あり)、14人はLINEのタイムラインについて言及し、家庭環境に言及したのは4人であった。

 市教委と遺族代理人の数度の予備折衝を経て、9月17日の第2回三者協議会において、合意書の締結に至りました。

2 合意書の内容
 遺族側は、本件中学校生徒に係る重大事態に関する調査委員会設置条例の改正要求(市教委の付属機関から市長部局の付属機関に改めること、調査委員は4名から6名に増やすこと等6項目)を撤回して、妥協しました。市側の抵抗が強く、妥協しないと、調査委員会の設置がさらに大幅に遅れることを避けたいとの判断からです。
 合意書においては、①4名の調査委員の内2名は弁護士とし、既に市教委の推薦依頼に基づいて日弁連から推薦を受けた1名のほかに、市教委と遺族が共同で日弁連に推薦依頼状を送付して、推薦を受けること。②あとの2名の調査委員は、大学教授等の有識者で、いじめや学校問題等に関する専門家から選任することとし、市教委と遺族側が共同で「団体」(関西教育学会、日本生徒指導学会など5団体)に推薦依頼すること。③具体的な推薦依頼先は、県教委が、適切な専門家を早期に推薦してくれる団体を調査し、市教委および遺族らの同意を得て決定すること。④生徒及び保護者、教職員、遺族その他からの事情聴取等の調査活動の補助業務を担当する調査員については、遺族らが8名程度は必要としていることに留意して、調査員の人数、人選、具体的な調査補助業務の内容等は、調査委員会の裁量に委ね、調査委員会で協議して決定すること。⑤生徒等に対する事情聴取は、原則として、弁護士の調査委員・調査員と、弁護士でない調査委員・調査員が、ペアを組んで担当すること。⑥調査委員会の事務局(庶務)は、市総務部の職員が担当し、市教委職員は担当しないこと。⑦調査委員会の所掌事務は、条例に明記しているa重大事態の事実関係の把握に関すること、b重大事態の原因の調査及び分析に関すること、の二つに加え、aによって明らかになった事実に対して、本件中学校がどう対応したのか又は対応しなかったのかを明らかにし、本件中学校及び市教委の自殺後の対応が適切であったかを考察すること(c)、及びこれらによって明らかになった事実及び考察から、いじめ、自殺、自殺前後の本件中学校及び市教委の対応について、子どもが健やかに生きるための環境整備の視点も踏まえた再発防止に関する提言を行うこと(d)も含まれることを確認すること。⑧調査委員会に対し、所掌事務についての結論及びその結論を導く根拠となった資料並びにこれらの資料により結論を導くに至った判断過程を、報告書にできる限り詳細かつ明確に記載することを要請すること等が確認・合意されました。
 これに伴い、3人の調査委員の先生方は、同日付けで調査委員の職を解かれることになりました。

3 成果と今後の課題
 本事件の発生から3月後の6月28日に議員提案で「いじめ防止対策推進法」が成立しました。
本法は、いじめ問題を「いじめた子」と「いじめられた子」の二項対立の図式に単純化し、「いじめた子」に対する処罰と懲戒、あるいは規範意識と道徳の徹底をもって、いじめをなくすという視点で貫かれており、子どもの権利を尊重し、いじめが起こった原因にさかのぼって対応を検討するという視点が欠落しているなど、問題点が少なくありませんが、いじめ自殺や深刻ないじめの根絶を願う遺族らとしては、本法が(改正も視野に入れて)有効に機能していくことを望んでいることは間違いありません。
 衆参の付帯決議にもあるように、本法に基づいて設置されるいじめ防止等の対策を担う調査委員会(付属機関)に「専門的な知識及び経験を有する第三者等の参加を図り、公平性・中立性が確保されるよう努めること」が重要であり、また「本法の運用にあたっては、いじめの被害者に寄り添った対策が講ぜられるよう留意する」こと、「重大事態への対処に当たっては、保護者からの申し立てに適切かつ真摯に対応すること」が必要不可欠です。
本法は、9月28日に施行されましたが、本法11条が規定している「いじめ防止基本方針」の策定が施行日に間に合わないという異例の事態となっています。新聞報道によると、9月26日開催の第5回いじめ防止基本方針策定協議会でも、自治体、学校、教員の役割について国がどこまで踏み込むのか、いじめの調査メンバーをどうするのかなどで、議論が紛糾し、意見集約が10月以降にずれ込むことになったようです。
 調査委員会(付属機関)が第三者性、公平・中立性を有するものとして設置されることが必要不可欠であり、委員の選任手続きの透明性・可視化が図られなければなりません。被害者側の納得という視点から被害者側からの推薦候補者を委員に入れることも考慮されるべきです。
本法および基本方針等に規定や基準が定められていない中で、橿原市および橿原市教委が独走した調査委員会を解散させ、新たに、第三者性、中立・公正性が確保された調査委員会を設置させることができたのは、遺族と私たち弁護団の協力共同の取り組みによる大きな成果です。遺族に好意的なマスコミ報道も後押しとなったものと思われます。
 調査委員会の発足が、大幅に遅れたため、生徒に対する面接調査などに困難が予測されます(3年生は来春に高校受験を控えています)が、私たち弁護団は、調査委員会を信頼して、遺族の情報のすべてを適切に提供して、本件の真相を解明し、「学校におけるいじめを根絶したい。」「被害生徒のような悲劇は二度とおこしてほしくない。」との遺族の願いを、学校関係者や広く市民・国民と「共有」できることを目指して、引き続き奮闘する決意です。
弁護団には、当事務所から藤澤、中谷と私の3人が参加しています。

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活かそう!守ろう!日本国憲法 (3) -人権と自由の大幅な制限

[弁護士 佐藤真理]

<立憲主義の否定>
 憲法は、国民の人権保障のために権力を縛るものです(立憲主義)。憲法99条が、「天皇、摂政、国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は憲法の尊重擁護義務を負う」としているのは、その趣旨です。ところが、自民党草案は、国民に憲法尊重義務を負わせ、国民の権利・自由を制約しようとしています。

<公益・公の秩序による広範な人権制限>
 現行憲法にも「公共の福祉」による人権制約が規定されていますが、これは人権と人権の相互の衝突を調整するためのものです。たとえば、夜中に住宅街の路上で大騒ぎするのは、近隣住民の平穏な生活権を侵害することから一定の規制を受けることになります。ところが、自民党草案は、「公益及び公の秩序」による制約を提案しており、「国益や国の秩序」を根拠に人権を制限することができるようにしようというのです。明治憲法下の「法律の留保」(法律の範囲内での自由の保障)の復活となりかねません。
 とりわけ表現の自由については、わざわざ「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。」と規定し、国民の「体制批判」の言論・政治活動の規制をねらっています。

< 社会権の切捨て>
 公務員の労働基本権を法律で制限できるようにし、また「財政の健全性」を謳い、これを口実とした社会保障費削減・生存権の切捨てに道を開こうとしています。

<異質な「家族」規定>
 自民党草案は、家族の尊重と相互扶助義務を憲法に盛り込もうとしています。憲法の「個人の尊重」を柱とする人権保障制度とは全く異質の規定の導入です。そのねらいは、一つは、戦前の「家」制度による国民生活統制の復活です。もう1つは、最近の生活保護バッシングに見られるように、国の生存権保障を後退させて家族に責任を押し付けることです。

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活かそう!守ろう!日本国憲法 (2)-平和主義から「戦争をする国」へ

[弁護士 佐藤真理]

<侵略戦争への反省の投げ捨て>
 憲法前文には「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し」と謳い、侵略戦争についての政府の加害責任を深く反省しています。
 ところが、自民党改憲草案では、「先の大戦による荒廃や幾多の大災害を乗り越え」となっています。侵略戦争を引き起こした責任の所在を覆い隠し、「惨禍」を「荒廃」に置き換えて自然災害と同列に置くことによって、日本軍のアジアでの加害行為や大空襲・原爆などによる犠牲から目を背けるものとなっており、侵略戦争への反省を投げ捨てています。

<平和的生存権の否定>
 憲法は、「日本国民は、恒久の平和を念願し…平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」(前文)として、平和的生存権を明記していますが、草案では、この規定は全面削除です。

<国防軍の創設>
 草案は、憲法の「戦力を保持しない」、国の「交戦権を認めない」との規定(9条2項)を削除し、「国防軍」を創設するとしています。
 国防軍は、自衛権の枠を超えて「国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため」に保持される(草案9条の2第1項)としており、集団的自衛権の行使も認めています。
 国防軍は、第1項の活動のほか、「国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動」すなわち多国籍軍などへの海外派兵も任務とされ、さらに、「公の秩序を維持し、国民の生命若しくは自由を守るための活動」すなわち治安出動や国民監視も任務としています(同条3項)。
 国防軍の機密に関する事項を法律で定めるとして、秘密保護法制を憲法上の前提として、国民の知る権利、表現の自由に対する広範な制限を準備しています。
 さらに、国防軍の機密に関する罪などの裁判を行うため、国防軍の審判所を置き、戦前の軍法会議の復活までねらわれているのです。

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活かそう!守ろう!日本国憲法(1)-憲法96条改定は全面改憲の突破口

[弁護士 佐藤真理]

  自民党安倍内閣が再登場しました。6年前、強行採決を繰り返して、「改憲手続法」を成立させ、任期中に改憲国民投票を実施すると公言した人物です。昨年暮れの衆議院選挙での自民党「圧勝」を受けて、衆議院では、改憲派が7割以上を占めるに至り、夏の参議院選挙の結果次第では、憲法改正の国民投票が、2、3年内にも実施される現実的可能性が高まっていることを直視しなければなりません。
  昨年公表された自民党憲法改正草案(以下「草案」)は、現行憲法の「全面改定」をねらうものです。その問題点を数回にわたり解説します。

 安倍首相は、国会答弁で、衆参両院の3分の2の賛成で改憲案を発議するとしている憲法96条を改定すると繰り返しています。9条改憲という年来の主張はいったん切り離し、まず改憲の発議要件を衆参各2分の1の賛成に緩和しようというのです。この発議要件の緩和を許すと、「ねじれ国会」という例外的状況でない限り、国会で多数議席を持つ政府・与党は、国民投票で勝利する見込みがあれば、いつでも明文改憲を実現できるということにになります。

 では、国民投票において、改憲をストップできるのかというと、きわめて困難です。「改憲手続法」では、有権者数や投票総数の過半数ではなく、有効投票の過半数の賛成で改憲成立としており、最低投票率の定めもないため、有権者の1割ないし2割台の賛成だけで改憲が成立します。しかも、マスメディアを通じた有料意見広告が投票前2週間を除いて「野放し」なため、資金力のある改憲派大政党や財界・大企業が大量のテレビ・スポット広告を垂れ流し「金の力で憲法を変える」事態が予想されます。
 現憲法が改憲要件を厳しくしているのは、基本的人権の不可侵性に照らし、時の多数派(政府)によって人権を侵害するような改憲を許さないためです。 

 憲法96条の改憲を許せば、その後にいくらでも改憲ができるようになります。9条や人権規定などの改憲の突破口としての96条改憲を断固阻止しなしなければなりません。

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